「一緒に暮らしているのに、こんなに寂しいなんて」

「子どもや孫と一緒に暮らしていて幸せでしょう、とよく言われるんです。でも、私の本音は……少し違うんです」

そう語るのは、都内近郊に暮らす82歳の女性、南川佐和子さん(仮名)。老後の安心を求めて選んだ「家族との同居」でしたが、そこに待っていたのは想像と違う“静かな孤独”でした。

佐和子さんの夫はすでに他界、自分の年金と夫の遺族年金を合わせて月16万円を受け取っています。長年住み慣れた家は夫の死と共に取り壊され、今は息子が購入した一戸建てで、息子夫婦と大学生の孫と4人暮らしです。

夫が亡くなった直後はひとり暮らしを続けていた佐和子さんでしたが、息子の強い希望で、数年前に同居を始めたのです。

「母さん一人だと心配だから、こっちに来てよ。部屋も空いてるし」

資産は800万円と心もとなく、82歳という高齢でもあるため、佐和子さん自身も最初は安心感と感謝がありました。けれど、それも束の間。息子夫婦は共働きで、朝は早く、帰宅は19時過ぎになることが日常です。孫も大学の授業やアルバイト、友人との付き合いで家にいる時間は少なく、夕方以降に顔を合わせることは稀でした。

「夕飯を作ろうにも、何人分作ったらいいのかわからない。帰ってくるのか来ないのかも聞いてもはっきりしなくて……」

結局、自分だけの分を用意して、静かな食卓に向かうことが日常になっていたのでした。

「一人暮らしのときよりも、誰とも話さない日が増えたような気がします。家族の声は聞こえても、私の生活には入ってこないんです」