35年間地方銀行に勤務し、3,000万円の資産と月20万円の年金で悠々自適の老後が約束されていたはずの柳瀬康夫さん(仮名・65歳)。しかし、定年退職の祝賀会から帰宅すると、妻からの衝撃的な置き手紙が待っていました。「お疲れさまでした。でも、私はもう限界です。さようなら」——。倹約こそが美徳と信じて歩んできた人生で、なぜ妻は去っていったのでしょうか。この悲劇を通して、FPの青山創星氏と一緒に本当に豊かな老後とは何かを考えます。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「さようなら、あなた…」〈年金月20万円〉〈資産3,000万円〉潤沢な資金で定年を迎えた銀行員、祝賀会を終え帰路に着くと…酔いも醒める「衝撃的な置き手紙」【FPの助言】
妻の別居宣言、失われた資産と年金の現実
美佐子さんは娘夫婦の近くにアパートを借り、別居生活を開始しました。康夫さんが必死に連絡を取ろうとしても、「もう一緒には暮らせません」の一点張り。そして美佐子さんは、離婚に向けて弁護士に相談を始めたのです。
定年後も元上司とのゴルフを続けていた康夫さんは、ゴルフ仲間からも「奥さんに逃げられるなんて、よっぽどのことがあったんだろうな」と陰で噂される始末。銀行員としての威厳も地に落ちました。
「結婚期間中にお二人で協力して築いた財産については、財産分与の対象となります」
弁護士から説明を受けた康夫さんは愕然としました。離婚が成立すれば、婚姻期間中に夫婦の協力で形成した資産が分割対象となり、美佐子さんにも相当額が分与される可能性があります。また、年金についても年金分割制度があり、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を最大2分の1まで按分できることを初めて知りました。
「3,000万円があっても、半分近くを失う可能性がある。年金も減額される。ゴルフに使った何百万円があれば……」
さらに、康夫さんは一人暮らしの生活費が予想以上にかかることも実感していました。美佐子さんがいかに家計を切り盛りしてくれていたか、今になって痛感したのです。康夫さんが描いた「悠々自適の老後」は、完全に崩れ去りました。お金を貯めることばかりに集中し、妻には厳しく、自分には甘い生活を続けた結果がこれだったのです。