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夫を亡くした妻。心の支えになったマイホームの存在
都内近郊で中学3年生の娘と70代の母親と共に暮らす、山本聡子さん(45歳・仮名)。現在、契約社員として働き、その年収は380万円ほど。8年前に夫を亡くして以来、母と娘を支えてきました。
「娘が小学生のときに夫が突然亡くなったときは、悲しみよりも、この先、どうやって生きていけばいいのか、不安のほうが大きかった。ただ、夫がこの家を遺してくれたから、今の生活があります」
2020年に行われた国勢調査によると、配偶者と死別している女性は747万1,826人。また夫を亡くしたことでシングルマザーになったのは4万2,842人。聡子さんと同じく40代は2.3万人ほどいます。
聡子さんが夫を失ったとき、3,600万円の住宅ローンが残っていたそうです。しかし、団体信用生命保険によって住宅ローンは完済になりました。基本的に住居費がかからないため、年収400万円以下の収入であっても、親子3世代で生きていくことができたといいます。
「住むところがある、しかもお金の心配をしなくてもいい……それだけで精神的な余裕がまったく違いました」
三世代での穏やかな暮らし。しかしその日常は、聡子さんの母・千恵子さん(70歳・仮名)のがん発覚を機に、一変します。標準治療の効果が思わしくないなか、担当医からひとつの可能性が示されました。「先進医療」に指定されている「粒子線治療」です。体に負担が少なく、高い治療効果が期待できるという、まさに希望の光でした。
「先生から『自己負担で300万円ほどかかります』と言われました。色々調べたんです。粒子線治療のうち、保険適用となっている一部の疾患・部位に対しては高額療養費制度が適用されるって。でも、母の場合はやっぱり自由診療になってしまうみたいで……」
聡子さんの貯蓄は200万円ほど。母のわずかな貯えを合わせても、到底届く金額ではありません。