厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」」によると、日本では同居20年以上の「熟年離婚」が増加しているようです。理由はさまざまですが、なかには自分がした行為の後ろめたさから離婚を切り出すケースも……。55歳女性の事例をもとに、「熟年離婚」が老後の資産形成に与える影響についてみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
後悔しています…パート先で不倫の末離婚→優しい夫から「現金1,000万円」と「自宅」を奪い取った55歳女性の末路【CFPが警告】
A氏が白状した「まさかの事実」
たまらずA氏に問いただすと、彼には離婚歴があり、別れた妻のもとに子どもが3人いることがわかりました。
「毎月、まとまった金額、養育費として払わなくちゃいけなくて……」
おまけにギャンブル癖もあり、給料のほとんどをパチンコや競馬につぎ込んでいることがわかりました。さらに、優子さんとの関係が悪くなると、たびたび家に帰らず、女性の影もチラつくように。
「……わたし、いいように利用されただけ?」
ようやく気づいたときには、時すでに遅し。剛さんと離婚してから、1年2ヵ月が経っていました。
離婚から数年後…
一方、元夫の剛さんは優子さんと離婚したあと、60歳の定年退職を迎え、2,000万円の退職金を手にしました。さらに同じ会社で65歳まで再雇用で働くことも決定。知り合いのFPに今後のライフプランを相談したところ、年金受給後もいまの生活レベルを維持したまま95歳までは生活に問題がないことがわかり、ひと安心です。
また、心強いことに、先日、事の顛末を知った長男から連絡があり「一緒に暮らそう」と誘いを受けました。しかし剛さんは、笑顔で「いつかはお世話になるかもしれないが、いまはまだいいよ。1人で気楽にやっていく」と返答。自分のために、穏やかで自由な時間を大切にしていく決意を固めたようです。
一方の優子さんは、いまさら自分の置かれた状況におののき、急に将来が不安になっています。A氏をマンションから追い出し再度離婚をしたのはいいものの、預金はすでに400万円を切っています。また、A氏と同じスーパーで働くわけにもいかず退職、無職となってしまいました。
「ねんきん定期便」によると、優子さんが65歳から受給できる年金は月に7.5万円ほど。しかし、これは60歳まで現状維持の社会保険制度(第3号被保険者)に加入している場合の想定です。1人になったいま、今後は自分で社会保険に加入して保険料を負担しなければ年金額も健康保険も維持できません。
「あの人と結婚生活を続けていたら、安定した老後が待っていたのに……」
自らの過ちで、安定した老後を手放してしまった優子さんなのでした。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表