老後の生活を支える大切な公的年金。しかし、その制度は複雑で、家族構成や働き方の変化によって受給額が変動することがあります。自分は大丈夫だという思い込みが、ある日突然「年金が減った」という事態を招くかもしれません。「知らなかった」では済まされない、年金制度に潜む思わぬ落とし穴について解説します。
ある日、年金が年40万円消えた…高齢夫婦が年金事務所で青ざめた「加給年金終了」という残酷な現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

ある日みた預金通帳に違和感

「まさか、自分たちの年金が減っているなんて、夢にも思いませんでした」

 

都内在住の高橋正一さん(70歳・仮名)と洋子さん(65歳・仮名)夫婦。年金が減る……そんな残念なことが起きたのは、洋子さんが65歳の誕生日を迎えてから数ヵ月後のこと。

 

ことの発端は、洋子さんが記帳した預金通帳。

 

「いつものように記帳したら、年金の振込額が数万円も少なくて。『え?』と思って、思わずお父さんを呼んだんです。そのときは、何かの間違いだと思っていました」

 

正一さんも当初は楽観的だったと振り返ります。


「システムのエラーか何かで、来月には戻るだろう、なんて軽く考えていましたね。でも、念のためにと二人で年金事務所へ向かったんです」

 

そこで夫婦が知ったのは「加給年金の終了」という事実。職員は「よくあるんですよね、その質問」という顔で、「奥様が65歳になられたので、ご主人に支給されていた加給年金が終了になったんですよ」と教えてくれたといいます。

 

「こっちは『えっ、かきゅうねんきん?』ですよ。言葉の意味すら分からない。よくよく聞けば、妻が65歳になるまで、私の年金に年間40万円近くも『家族手当』のようなものが上乗せされていた、と。それがゼロになったと言うんです」

 

いつの間にか上乗せされ、いつの間にか支給が終わっていた年金の存在を、この時初めて知りました。

 

正一さんは職員に「なぜ、そんな大事なことを事前に知らせてくれないのか」と問うと、「奥様が65歳になられた後、ご主人様宛に『年金額改定通知書』が届いているはずですが……」という返答。夫婦は記憶を手繰り寄せます。
「そういえば、役所から緑色の封筒が来ていたなと思い出したんです。でも、ちょうど妻の年金手続きの書類も届いていた時期で、てっきり『妻の年金が始まります』という知らせだと思い込んでしまって……。中身をきちんと確認しなかった、自分の完全な見落としでした」

 

通知は届いていたにもかかわらず、その確認を怠っただけでした。自分たちの確認不足が招いた現実に、憤りと落胆を覚えたのです。