マイホームを建てる際には、窓や壁、お風呂など細かい設備にいたるまで、あらゆる判断が求められます。そのため、予算オーバーを避けようと、「できるだけ安くしよう」と考えがちです。しかし、初期費用を削った結果、寒い家・暑い家に長年住み続けることになれば、かえって「住宅貧乏」に陥る可能性があるようです。本記事では、一級建築士の松尾和也氏の著書『間違いだらけの省エネ住宅』(日経BP)より、マイホームを建てるうえで守るべき「7つの鉄則」を紹介します。
暖房費のために働く人生…世帯年収1000万円未満の日本人がわざわざ「寒い家」を建てている不思議【一級建築士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家計が苦しい家庭こそ守りたい「マイホーム7ヵ条」

家計が苦しい家庭であればあるほど、先述した(1)と(2)に加え、以下の5項目も満たすようにすべきです。それができなければ、イニシャルコストが安くなっても結局、月々の支払いは多くなってしまいます。

 

(3)冬の日射取得(南面からの日射取得)

(4)夏の日射遮蔽(南面の庇、東西北面の窓の極小化、Low-E化)

(5)給湯器の選択(おひさまエコキュート)

(6)エアコンで冷暖房(エアコンが効く家にする。エアコンだけで冷暖房、除湿が完結する)

(7)太陽光発電

 

(5)について説明すると、一般的な住宅では給湯が最も多くのエネルギーを使います。給湯機器の選択は、設計者にとっては一瞬の判断ではありますが、住まい手にとっては機器が壊れるまでの10〜15年間の光熱費に大きく関わってきます。よく吟味する必要があると思います。

 

(資料:資源エネルギー庁)
[図表3]世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費 (資料:資源エネルギー庁)

 

(6)に関しては、「エアコンは嫌いだから輻射型の暖房器具を使いたい」という要望があります。ただ、エアコン以外の冷暖房器具を選択することは、エアコンぐらいしか選択肢がない冷房器具にプラスして他の暖房器具を設置することになります。つまり、暖房設備の二重投資となるわけです。

 

(資料:松尾和也)
[図表4]暖房器具別の光熱費単価 (資料:松尾和也)

 

暖房器具は何を選んでも、エアコンよりも光熱費が高くなることにも注意が必要です(まきストーブだけは、まきが無料もしくは格安で入手できればその限りではありません)。

 

なお、輻射型暖房の上質な心地よさは私も十分に理解しています。7つの項目をすべて満たした上で、一種のぜいたくや嗜好、日本の森を守るといった意味で採用するのであればよいでしょう。

 

隙間面積が多い住宅は、健康リスクにも関わる

最初に示した「(2)C値が最低でも1以下」という項目は、エアコンが効く住宅と密接に絡んできます。相当隙間面積(C値、建物の隙間を集めた面積(cm2)を床面積(m2)で除した値)が大きい住宅では、空気で冷暖房するエアコンは効きが極めて悪くなります。

 

それ以前に、C値が1よりも悪い住宅においては、大半の住宅が採用している3種換気では清浄な空気質を維持することが不可能です。これは健康リスクにも関わってくる項目なので、その意味でも重要です。