厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、日本の全世帯のうち約2%が親へ仕送りをしているそうです。また、仕送りをしている世帯のうち、最も多い年齢層は50代なのだとか。恩返しの気持ちや、親から催促されて仕方なく、親の生活のためやむを得ずなど、仕送りする理由はさまざまでしょう。ただ、なかには仕送りが「思わぬトラブル」を招くケースも……。とある親子の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。
どうか夢であってくれ…年収800万円の54歳サラリーマン、年金暮らしの79歳母から届いた「仕送り増やして」LINEに不信感→“アポなし帰省”で発覚した衝撃の事実【FPの助言】
裕之さんの目に飛び込んできた「衝撃の光景」
足早に階段を駆け上がり、合鍵を使って実家の玄関を開けると、そこには衝撃の光景が広がっていました。
「なんだよ、これ……」
居間に続く廊下には、壁に沿って大量の段ボールが積まれています。
段ボールを避けるように居間に入ると、さらに衝撃は続きます。明らかに新品の大型テレビや最新型のマッサージチェアが無造作に置かれ、高齢女性の一人暮らしには不似合いなレザーのソファセットが存在感を放っていました。年季が入っていたキッチンも、リフォームされたばかりのようにピカピカです。
前回帰省したときとはまったく違う“異様”な状況に、裕之さんはしばらく茫然としてしまいました。
「母さん、これはいったい……」
「あら! びっくりした。なんだ裕之、帰って来るなら教えてよ。美味しいもの作っておいたのに~」
突然帰って来た息子に驚きつつもうれしそうな節子さん。裕之さんが驚いている様子を感じとると、あっけらかんと次のように言い放ちました。
「ああ、これ? 驚かせちゃってごめんなさい。実はねお母さん、投資しているのよ。もうすぐ入金があるはずだから、先に買っちゃおうと思って」
「……投資?」
母の言葉に、嫌な予感が全身を駆け巡りました。
高齢者を狙った「悪質な詐欺」の可能性
その後、お金の流れを確認しながら問い詰めると、SNS経由で典型的な「ポンジ・スキーム」に引っかかっていたことが発覚しました。最初のうちは、節子さんも詐欺ではないかと疑っていたものの、少額の投資に対してきちんとリターンが振り込まれていたことで、すっかり信頼してしまったようです。
通帳を確認すると、最初のうちは振り込んだ金額に対してリターンの振り込みがあるものの、節子さんが数百万円の大きな金額を振り込んだタイミング以降、ぱったりと入金がなくなっています。
「ほら、このときから入金がなくなってる。やっぱり詐欺だよ」
裕之さんがこう説明しても、節子さんは「ううん、入金はまだだから。もうすぐだから」と信じて疑いません。そうして、合計で1,000万円以上の支出をしてしまっていたばかりか、リターンを見込んで散財していたのです。
その後、裕之さんは警察にも相談しましたが、犯人の特定は難しいようで、お金が戻ってくるめどは立っていません。
「母さんのためを思って仕送りしていたのに、まさかこんなことになるなんて。どうか夢であってくれ……」