厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、日本の全世帯のうち約2%が親へ仕送りをしているそうです。また、仕送りをしている世帯のうち、最も多い年齢層は50代なのだとか。恩返しの気持ちや、親から催促されて仕方なく、親の生活のためやむを得ずなど、仕送りする理由はさまざまでしょう。ただ、なかには仕送りが「思わぬトラブル」を招くケースも……。とある親子の事例をもとにみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。
どうか夢であってくれ…年収800万円の54歳サラリーマン、年金暮らしの79歳母から届いた「仕送り増やして」LINEに不信感→“アポなし帰省”で発覚した衝撃の事実【FPの助言】
離れて暮らす親のために今日からできること
今回の事例のように、高齢者を狙った投資詐欺は後を絶ちません。近年は詐欺の手口も巧妙化しており、言葉巧みに高齢者の信頼を得て、子世代が気づかないうちに被害が広がってしまうケースが増えています。
このような被害に遭わないためには、「気づく仕組み」と「話せる関係」が大切です。子世代があらかじめできることとしては、下記の4点があげられます。
1.仕送りは「目的」を明確に
「足りないから」だけで送金せず、「医療費が増えている」「公共料金が高くなった」など、具体的な内訳を確認しましょう。
2.通帳や明細は「一緒に」確認
可能であれば、定期的に通帳やカード利用明細を一緒に確認することで、不審な支出を早期に発見できます。電話などで会話を増やすだけでも、親の生活の変化や不自然なお金の使い方に気づきやすくなります。
3.お金の話をオープンにできる関係づくり
「迷惑をかけたくない」「恥ずかしい」という心理から、高齢者は被害を抱え込んでしまいがちですが、これが二次被害につながる可能性を高めます。普段からお金について気軽に話せる雰囲気をつくることが大切です。
4.金融リテラシーを学ぶ
「必ず儲かる」「高配当を保証」などの怪しいワードを、親と共有しておきましょう。また、消費生活センターや金融機関など、「迷ったらここに電話」という相談先を決めておくと安心です。
上記にあげた4点は、どれも今日から始められることです。大切なのは、必要以上に疑うことではなく、一緒に守る姿勢です。
仕送りを「意味のある支援」にするために
親子でもお金の話はあまりしてこなかったという家庭も少なくないでしょう。しかし、仕送りを本当に意味のある支援にするには、親子で生活状況を共有し合うことが大切です。
投資詐欺は「自分には関係ない」と思っている人ほど狙われやすく、高齢の親世代にとっては決して他人事ではありません。高齢の親を守るには、「自分は大丈夫」と思い込ませないことが第一歩です。
仕送りをする際は、その使途を確認し、通帳や明細を一緒に見直す習慣を持つことが大切です。こうした小さな習慣が、大きな安心につながります。さらに、お金のことをオープンに話せる関係を築いておくことが、親の老後を守ることにつながります。
石川 亜希子
AFP