「年金の繰下げ受給」はおすすめしない?

加山雄一さん(仮名・59歳)は、3ヵ月後に60歳の定年を迎えます。定年後は、再雇用で65歳まで同じ会社で働く予定です。

再雇用後の収入は現在からおよそ2割ダウンの月収50万円。加えてボーナスもありませんが、すでに子どもは独立し住宅ローンもないため、夫婦2人暮らしには十分な収入だといえるでしょう。

再雇用後は役職から離れるため残業も少ない見込みで、雄一さんは「やっと自分の時間が持てる」と定年を心待ちにしています。

そんなある日、雄一さんは帰り道で元同僚の賢治さん(仮名)とばったり。賢治さんは、1年前に退職して同じ会社に再雇用で働いている先輩です。2人はそのまま居酒屋へ向かい、近況について話すうちに、話題は年金へと移りました。

「65歳まで再雇用で働いて、もしその時点で70歳まで働ける見込があるなら、年金は繰り下げて受給しようと思ってるんですよね。繰り下げれば年金も増えるし……」

雄一さんがこう言うと、賢治さんが難しい顔をして次のように返しました。

「悪いことは言わないから、年金繰下げ受給はやめとけ」

「なんでですか? だって、年金をもらいながら働くと年金が一部カットされるんですよね? だったら働けるうちは給与だけで生活して、年金はできるだけ繰り下げて将来受け取れる年金額を増やしたほうがいいでしょう」

「それがな、そんな単純な話ではないようなんだ。まあ、人によるんだけどな」

ここで食事が届き、別の話題に移ってしまったため、この日はそれ以上の話はできませんでした。

翌日、雄一さんは賢治さんの言葉が気になり、「在職老齢年金制度」と「年金繰下げ受給」について調べてみることにしました。