内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると65歳~69歳で働いている人の割合は年々上昇しており、令和5年度は男性では6割を超えています。ただし、定年後も再雇用で働いている、もしくは働く予定がある人は、くれぐれも「年金ルール」を確認しておきましょう。人によっては、本来受け取れていたはずの年金が受け取れなくなるケースも……。具体的な事例をもとに、年金制度の注意点をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
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「年金繰下げ受給」はやめとけ…月収65万円の59歳サラリーマン、定年3ヵ月前に知った〈非情な年金ルール〉【CFPの助言】
「年金の繰下げ受給」はおすすめしない?
加山雄一さん(仮名・59歳)は、3ヵ月後に60歳の定年を迎えます。定年後は、再雇用で65歳まで同じ会社で働く予定です。
再雇用後の収入は現在からおよそ2割ダウンの月収50万円。加えてボーナスもありませんが、すでに子どもは独立し住宅ローンもないため、夫婦2人暮らしには十分な収入だといえるでしょう。
再雇用後は役職から離れるため残業も少ない見込みで、雄一さんは「やっと自分の時間が持てる」と定年を心待ちにしています。
そんなある日、雄一さんは帰り道で元同僚の賢治さん(仮名)とばったり。賢治さんは、1年前に退職して同じ会社に再雇用で働いている先輩です。2人はそのまま居酒屋へ向かい、近況について話すうちに、話題は年金へと移りました。
「65歳まで再雇用で働いて、もしその時点で70歳まで働ける見込があるなら、年金は繰り下げて受給しようと思ってるんですよね。繰り下げれば年金も増えるし……」
雄一さんがこう言うと、賢治さんが難しい顔をして次のように返しました。
「悪いことは言わないから、年金繰下げ受給はやめとけ」
「なんでですか? だって、年金をもらいながら働くと年金が一部カットされるんですよね? だったら働けるうちは給与だけで生活して、年金はできるだけ繰り下げて将来受け取れる年金額を増やしたほうがいいでしょう」
「それがな、そんな単純な話ではないようなんだ。まあ、人によるんだけどな」
ここで食事が届き、別の話題に移ってしまったため、この日はそれ以上の話はできませんでした。
翌日、雄一さんは賢治さんの言葉が気になり、「在職老齢年金制度」と「年金繰下げ受給」について調べてみることにしました。