内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると65歳~69歳で働いている人の割合は年々上昇しており、令和5年度は男性では6割を超えています。ただし、定年後も再雇用で働いている、もしくは働く予定がある人は、くれぐれも「年金ルール」を確認しておきましょう。人によっては、本来受け取れていたはずの年金が受け取れなくなるケースも……。具体的な事例をもとに、年金制度の注意点をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
「年金繰下げ受給」はやめとけ…月収65万円の59歳サラリーマン、定年3ヵ月前に知った〈非情な年金ルール〉【CFPの助言】
「年金繰下げ受給」と「在職老齢年金制度」のしくみ
公的年金は原則65歳からの受給ですが、任意で60歳から75歳までのあいだに受給開始時期を変更することができます。
65歳より遅らせて受給することを「繰り下げ受給」と呼び、遅らせた月数分、年金が増額します。増額率は1ヵ月あたり0.7%です。たとえば、70歳から年金を受け取る場合には0.7%×60月で、42%年金が増額します。
一方、「在職老齢年金制度」とは、70歳未満の人が厚生年金保険に加入して働く場合や、70歳以上の人が厚生年金保険の適用事業所で働いている場合に、老齢厚生年金の額と給与収入の合計額に応じて老齢厚生年金の一部、または全額が支給停止となる制度です。
支給停止の額は次の計算式で求めることができます。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額)-51万円※×1/2
※ 2025年度の金額。2026年4月からは62万円の見込み。
基本月額とは老齢厚生年金の報酬比例部分(または特別支給の老齢厚生年金)の金額です。加給年金や経過的加算額、繰り下げ受給による増加分は含まれません。
総報酬月額相当額とは、その月の給与(標準報酬月額)と過去1年間の標準賞与額の1/12を合算した金額です。たとえば、給与(社会保険料や税金が引かれる前の金額)が50万円で老齢厚生年金が15万円だった場合の2025年度の年金の支給停止額は次のとおりです(賞与なしで計算)。
(50万円+15万円-51万円※)×1/2=7万円(支給停止額)
※ 2025年度の金額。2026年4月からは62万円の見込み。
仮に65歳時点の給与収入が月収50万円で老齢厚生年金が15万円とした場合、老齢厚生年金から7万円が支給停止されてしまい、受け取ることのできる年金は老齢厚生年金の8万円と老齢基礎年金の合算額です。
「そうだよな、だから年金がカットされるくらいなら、働いて収入があるあいだは年金を繰り下げればいいんだよ。俺が知ってたとおりじゃないか」
ところがその後、雄一さんは“重大な勘違い”に気がつくことになります。