歯磨き時の出血は、若年性認知症の“静かな始まり”かもしれない

「最近、歯磨きのときに血が出るんです。痛みもないし、忙しいから放っておいたのですが……」

夏の暑さが和らいできたある日の歯科医院。都内で会社を経営する香川さん(仮名/48歳男性)が2年ぶりに受診しました。

その後、歯科医師が普段の生活状況について聴いていると、急に小声になってこういいました。

「先生、少し前に『若年性認知症』がネットニュースで取り上げられたのを知っていますか? 僕もよくお酒を飲むし、仕事でのストレスも多いから、なんだか怖くなってしまってね」

同じような不安を抱えているビジネスパーソンは、香川さんだけではないはずでしょう。

働き盛りの世代にも忍び寄る「認知症」

2025年3月に発表されたある論文が、衝撃的なデータを公表しました。1990年から2021年の約30年間で、40〜64歳の若年性認知症患者が、世界で2倍以上に増加したというのです。さらにこの増加の背景には、飲酒、喫煙、高糖質、さらに、もはや国民病とも囁かれるようになった高BMI(肥満)などが強く関連しているという事実も明らかになりました。

かつて「高齢者の病気」と思われていた認知症は、いまや働き盛りの世代にも静かに忍び寄ってきています。実際、若年性認知症患者は日本国内でも3.5万人以上に上り、年々増加傾向です(厚労省、日本医療研究開発機構)。

若年性認知症の怖いところは、その進行速度。高齢者のケースに比べて、2倍以上の速さで進行するため、早期発見が極めて重要となります。なぜなら、認知症の原因である「アミロイドβ」が、まさに働き盛りの40代後半から、あなたの脳にもこっそりと蓄積しはじめている可能性があるからです。