うらやましい…ミツルさんの“満たされた”アパート生活

こうしてすっかりアパートになじんだミツルさんは、有り余る資産を趣味の車につぎ込むと決断します。

「免許返納まであと何年かわからないが、趣味の車に好きなだけお金を使おう」と、現金一括で新車のレクサスを購入したのです。

実は、ミツルさんはこのほかにもヴィンテージカーを2台所有しています。15年前から近くに屋根付きのガレージを借りて保管しているそうです。こちらは鑑賞目的の意味合いが大きく、度々修理が必要になるもそこは元整備士、お手の物です。

ミツルさんは「離婚したばかりのころは寂しさを感じることもありました。でも、いまは誰の顔色も気にすることなく愛車に囲まれながら、秘密基地みたいなこのアパートでの生活が本当に幸せなんです。離婚ですか? まったく後悔していません」と笑顔で話してくれました。

おひとりさまは「将来を見据えた備え」を

高齢者の単身世帯は増えています。内閣府の令和6年版高齢社会白書によると、65歳以上の人口に占める単身の割合は令和2年では男性15%、女性22.1%。今後も単身世帯は増加する見込みです。

一般的に老後の収入の柱は公的年金です。年金収入内で生活していくことが望ましいですが、不足する場合は貯蓄を取り崩していくことになるでしょう。しかし、自営業者など年金が基礎年金のみの場合では年金収入で生活していくのは厳しいため、預貯金など金融資産の積み増しが重要になります。

ミツルさんは、老後を見据えて早くから大きな資産を築いてきました。そのため、無職となったいま、貯蓄を取り崩しながら生活していくのは計画通りといえます。

お金では解決できない「身元保証人」の壁

しかし、高齢期の単身世帯では、お金だけでは解決できない問題に直面するケースもでてきます。ミツルさんの場合は、住宅の賃貸契約がそれでした。

このような不都合を解消するには、「身元保証人」や「身元引受人」を確保しておくことが有効です。身元保証人がいれば、賃貸住宅の契約がスムーズに進む可能性が高まります。

身元保証人は実子や甥、姪といった親族が候補となりますが、身近に頼れる人がいないケースもあるでしょう。その場合、成年後見制度を利用したり、地域包括支援センターや社会福祉協議会などに相談したりするのも一つの方法です。

少し面倒に感じるかもしれませんが、こうした「事前の備え」が将来の自分を助けるための重要な一歩となるのです。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表