深刻化していく都市型水害のメカニズム

排水設備が完備され、河川は堤防で強固に防備された都市部。一見すると災害対策は万全だが、水害の危険は非常に大きい。

日本列島は季節風の強い影響下にあるので、梅雨や台風といった季節ごとの大雨が降りやすい。近年ではゲリラ豪雨による短時間の大量降雨も珍しくなくなった。大雨災害への対策は必須だが、都市部は構造上、こうした豪雨に非常に弱い。

都市部の水害としては、排水力を上回る集中豪雨によって下水道などから水があふれ出す、内水氾濫が有名だ。国土交通省の水害統計調査によると、2012~2021年に浸水した建物のうち、6割が内水氾濫によるものだった。

しかし、懸念される災害は内水氾濫だけではない。地下空間の浸水被害も大きな問題である。

大雨で道路が冠水すると、水が地下街や地下鉄といった地下空間へと一気に流れ込んでいく。すると、流れ込んだ水に足を取られて転倒したり、水位が上昇して溺死する可能性がある。実際、1999年6月29日の集中豪雨では、福岡県のJR博多駅周辺の地下空間が水没し、ビルの地下で1名が溺死した。7月21日にも、東京都新宿区の集中豪雨により、1名が地下室で溺れ死んでいる。

そうした水害リスクをより高めているのが、暗渠である。東京などの都市部には、かつて多数の河川が流れていた。近代化に伴い多くが埋められたが、一部は蓋をされて暗渠となった。その上を、自動車道路や歩道が走っている。

集中豪雨が発生すると、多くの水が暗渠に流れ込む。排水が追いつかなければマンホールから噴き上がり、時には下水が地上に漏れ出ることもある。道が冠水していれば、穴がわからず人が転落することもあるだろう。暗渠は目視ができないため、まさに隠れた水害リスクである。

こうした都市型水害を防ぐため、国土交通省は「地下空間における浸水対策ガイドライン」をつくり、浸水への安全確保を唱えている。各自治体でも、洪水調節池の設置や地下排水路の建設・拡張といった対策を進めている。増加する豪雨災害にどう対処するか。今後の都市運営の課題だ。