今後は被害拡大に注意 温暖化と台風の関係

南太平洋地域で発生する台風の数は、年間で平均25.6個。このうち日本に上陸するのは、平均3.5個である。

台風とは、積乱雲の集合体だ。積乱雲は、上昇気流によって垂直方向に大きく発達した雲で、雷や豪雨、突風をもたらす。赤道とその近辺は海水面の温度が高いため、上層との温度差で上昇気流が発生しやすい。水蒸気を含む空気は上空で積乱雲へと発達。積乱雲は数を増やしてやがて一つにまとまり、「熱帯低気圧」となる。この熱帯低気圧の中心の最大風速が秒速17メートルを超えると、台風と呼ばれるようになるのだ。アメリカ方面のハリケーンやサイクロンも、発生場所が違うだけで基本的な仕組みは同じだ。

はるか南方で生まれた台風が日本にくるのはなぜか。それは、太平洋高気圧と偏西風が影響して、進路が東寄りになるためだ。そして太平洋高気圧は、夏から秋にかけて最も活発となる。そのため、夏と秋は日本に台風が集中する。

台風が積乱雲の集合体ということは、地球温暖化によって南極の氷が融けて水蒸気が増えれば、発生数も増えるということだろうか? 意外にも、発生数は変わらないか、減少するというのが通説だ。

海水面の温度が全体的に上昇すれば、水蒸気量も大幅に増加する。だがそれによって上層の温度が安定し、上昇気流が弱くなると考えられる。上昇気流が発達しなければ積乱雲は大きくならず、台風も発生しにくくなるという理屈だ。気象庁による1951年から2019年までの統計でも、長期的な変化傾向はみられない。

だが、発生数とは別の問題も懸念されている。通常、台風は冷たい海上に入ると水蒸気の供給がなくなるので、弱体化していく。しかし、温暖化で海面温度が上昇すれば水蒸気が安定的に供給されるので、勢力が弱まりにくくなる。それにより、沿岸部では高潮などの被害がより大きくなると予想されている。

2013年11月8日にフィリピンを襲った台風30号(ハイエン)は、最大風速86メートルというスーパー台風で、死者・行方不明者は約8000名。強大化の原因は海水温の上昇とされている。

日本近海はここ100年で、1度以上も温度が上がっている。将来、ハイエンに匹敵する台風が日本を襲ってきても不思議ではない。

地形ミステリー研究会
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