鳥取砂丘が草原になりつつある?

鳥取県の観光名所といえば、鳥取砂丘を思い浮かべる人は多いだろう。鳥取市の日本海側に面し、南北約2.4キロメートル、東西約16キロメートルにもなる広大な砂地だ。国の天然記念物として、国立公園にも指定されている。

実はこの鳥取砂丘が、深刻な環境問題に直面している。雑草が伸び、砂丘の草原化が進んでいるのだ。

「砂漠なのに草原になるの?」と疑問に思うかもしれないが、鳥取砂丘は砂漠ではない。土地の乾燥などで形成される砂漠と違い、鳥取砂丘は中国山地由来の砂が起源だ。

どのようにして形成されたのか? まず、花崗岩などの岩石が風化して砂となり、雨や千代川にまぎれて日本海へと流れ出ていく。砂粒は海底に溜まったのち、潮流で海岸へと運ばれる。この砂が季節風などで内陸へと運ばれて、鳥取砂丘は形成された。

土地そのものが荒廃する砂漠と違い、砂丘は普通の土地に大量の砂が積み上がっただけなので、植物が育つことも可能である。

鳥取砂丘に雑草が生え始めている理由

では、なぜ雑草が生えてくるのか?

主な原因は、人間の植林業にある。

鳥取県の日本海側は古くから、冬の強風で運ばれる砂(飛砂)に悩まされてきた。そこで江戸時代には、砂を防ぐ植林が積極的に行われた。昭和期には、植林業も盛んとなる。これにより、高度経済成長期までに約720ヘクタールの土地が林となった。樹木は砂を遮るようになり、砂丘の成長はストップする。それだけではない。砂が減少した土地は雑草が繁殖し、砂丘の草原化が加速していった。

鳥取市は1960年代から1970年代にかけて、不必要な樹木の伐採を進めた。だが、次は外来種の侵入が問題となる。繁殖力の強い雑草が拡大し、1991年ごろには鳥取砂丘の4割以上が草原化している。

緑化問題の根本的な解決方法は、いまだにない。

県や市などにより、継続的な除草活動が続けられている。1994年から2022年までに、除草活動の参加者はボランティアを含めて約8万人。除草量は約78トンにもなっている。企業や団体が協力し、時には重機が投入されることもあるようだ。

鳥取県の貴重な観光資源にして名勝である鳥取砂丘。自然保護とのバランスをとった、環境の維持が求められる。

地形ミステリー研究会
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