中国地方の名所・鳥取砂丘。見渡す限りの砂に覆われた地面と日本海のコントラストが特徴です。しかし、その景観を「緑の草原」が占める日も遠くないとか……。私たちの知っている鳥取砂丘は、いつまでその姿を保っていられるのでしょうか。また、対策を講じることはできないのでしょうか。今回は、『47都道府県の怖い地理大全』(彩図社)より一部を抜粋し、鳥取砂丘に忍び寄る「草原化現象」を紹介します。
鳥取砂丘が草原になりつつある?
鳥取県の観光名所といえば、鳥取砂丘を思い浮かべる人は多いだろう。鳥取市の日本海側に面し、南北約2.4キロメートル、東西約16キロメートルにもなる広大な砂地だ。国の天然記念物として、国立公園にも指定されている。
実はこの鳥取砂丘が、深刻な環境問題に直面している。雑草が伸び、砂丘の草原化が進んでいるのだ。
「砂漠なのに草原になるの?」と疑問に思うかもしれないが、鳥取砂丘は砂漠ではない。土地の乾燥などで形成される砂漠と違い、鳥取砂丘は中国山地由来の砂が起源だ。
どのようにして形成されたのか? まず、花崗岩などの岩石が風化して砂となり、雨や千代川にまぎれて日本海へと流れ出ていく。砂粒は海底に溜まったのち、潮流で海岸へと運ばれる。この砂が季節風などで内陸へと運ばれて、鳥取砂丘は形成された。
土地そのものが荒廃する砂漠と違い、砂丘は普通の土地に大量の砂が積み上がっただけなので、植物が育つことも可能である。
鳥取砂丘に雑草が生え始めている理由
では、なぜ雑草が生えてくるのか?
主な原因は、人間の植林業にある。
鳥取県の日本海側は古くから、冬の強風で運ばれる砂(飛砂)に悩まされてきた。そこで江戸時代には、砂を防ぐ植林が積極的に行われた。昭和期には、植林業も盛んとなる。これにより、高度経済成長期までに約720ヘクタールの土地が林となった。樹木は砂を遮るようになり、砂丘の成長はストップする。それだけではない。砂が減少した土地は雑草が繁殖し、砂丘の草原化が加速していった。
鳥取市は1960年代から1970年代にかけて、不必要な樹木の伐採を進めた。だが、次は外来種の侵入が問題となる。繁殖力の強い雑草が拡大し、1991年ごろには鳥取砂丘の4割以上が草原化している。
緑化問題の根本的な解決方法は、いまだにない。
県や市などにより、継続的な除草活動が続けられている。1994年から2022年までに、除草活動の参加者はボランティアを含めて約8万人。除草量は約78トンにもなっている。企業や団体が協力し、時には重機が投入されることもあるようだ。
鳥取県の貴重な観光資源にして名勝である鳥取砂丘。自然保護とのバランスをとった、環境の維持が求められる。
地形ミステリー研究会
オフィステイクオー