会社の倒産や解雇など、失業した際に受け取れる「失業等給付」。この給付金は、ただ待っているだけではもらえません。正しい知識を持って、適切なタイミングで手続きをしなければ、本来もらえるはずの金額を大幅に下回ったり、最悪の場合、権利そのものを失ってしまったりすることさえあります。本記事では、河原優美子氏の著書『知らないと損する!お金の手続き』(ごきげんビジネス出版)より、「失業等給付」のしくみと受給要件についてみていきましょう。
65歳の誕生日の“前々日”に退職すべきだった…定年後の失業手当、たった数日の違いで給付金が激減する「非情なルール」【社労士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

失業等給付で受け取れる金額

失業等給付(求職者給付)で受け取れる給付金は、1日あたりの計算をしていきます。受け取る1日あたりの金額は、離職前(退職する前)の6か月間を平均した1日分の45~80%が給付金(基本手当日額)です。

 

ただし基本手当日額は下限額と上限額があり、次の表を参考にしてください。受け取れる条件は、受給資格(受け取れる資格のあるひと)として退職した日以前2年間に、加入者として働いた期間(被保険者期間)が通算して12か月以上あることです。加入者(被保険者)だった期間によって所定給付日数が違います。被保険者とは、会社との契約で1週間に20時間以上働くひとのことです。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表1]基本手当日額 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

 

《ポイント:受け取れる額》

・45歳以上~60歳未満のひとがいちばん受け取れる日額が高い。

・働いた全期間ではなく、退職直前の賃金しか計算されない。

・男女関係ない。

・健康保険・厚生年金と違い、いままで支払った保険料と比例しない。

 

一般の受給者と特定受給資格者や一部の特定理由離職者(定年や自己都合で離職したときと、障がい者などの就職困難者や倒産・解雇などで再就職準備の余裕がないなど特別なとき)は、給付日数(受け取れる日数)が違います。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表2]受け取れる日数 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

 

年金を受け取っている場合は要注意

そのほかにも、受け取る手続きをしたあとにケガや病気で働けないときが15日以上続くときは、手続きをすると傷病手当(健康保険の傷病手当金ではない)を受け取れます。もらえるお金として、技能習得手当や寄宿手当などもあります(ハローワークで再就職のために必要と認められるとき)。65歳以上(高年齢被保険者)で離職したときは、離職の日以前から6か月以上あるときに一時金を受け取れます。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表3]高年齢求職者給付金(65歳以上) 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

 

65歳前に特別支給の老齢厚生年金を受けているときや、老齢年金を65歳より前に繰り上げして早く受け取っているときは、雇用保険の求職者給付(失業給付)と老齢厚生年金の両方を受け取れません。障害年金や遺族年金は調整されないため両方受け取れます。

 

65歳以上になると雇用保険と年金の両方を受け取れます。それぞれ受け取る理由が違うからです。雇用保険は失業して働く意欲と能力がないと受け取れません。

 

《ポイント:退職したら受け取る》

・働く意欲と能力が必須。

・65歳の誕生日2日以上前に退職したときは最高150日(4週間に一度支給)。

・65歳の誕生日前日以降退職したときは50日(一時金)。

 

 

河原 優美子

社会保険労務士

 

※本記事は『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THEGOLDONLINE編集部が本文を一部改変しております。