家族との突然の別れ。その深い悲しみに追い打ちをかけるように、「遺された家族の生活費がない」という経済的な危機が訪れることがあります。そのためのセーフティーネットが「遺族年金」ですが、受給要件の厳しさと複雑さは、あまり詳しく知られていません。本記事では、河原優美子氏の著書『知らないと損する!お金の手続き』(ごきげんビジネス出版)より、遺族年金のしくみと受給要件について解説していきます。
夫が遺してくれたのは“もらえない年金”だった…。保険料の「3分の2納付」の壁で、遺族年金の権利を失う悲劇的なケース【社労士が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

遺された家族が受け取れる「遺族年金」

遺族年金は子がいる場合、遺族基礎年金や厚生年金(共済年金)に加入したひとが亡くなったとき、遺族厚生年金(共済年金)を遺族が受け取れます。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表1]遺族厚生年金(共済年金) 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

 

納付済み期間・合算期間・免除期間などあわせて25年以上あるひとを対象とし、年金を受け取っているときに亡くなった場合と、受け取る前に亡くなった場合に、遺族年金を受け取れます。厚生年金(共済年金)の加入中に亡くなり保険料を25年以上納めていないとき、厚生年金(共済年金)に加入していたときに病院へ行き(初診日があり)5年以内に亡くなったとき、障害年金(1級~2級)を受けていて亡くなったとき、なども対象です。

 

遺族年金を受け取れる条件があります。死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者の期間に、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済年金被保険者期間)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表2]遺族年金を受け取れる条件 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

 

特例として、死亡日において65歳未満であること、死亡日の前日において死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料未納期間がないことです。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表3]保険料納付要件特例 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋

遺された家族の「属性」と「年齢」に要注意…「遺族厚生年金」の受給要件

配偶者(妻)については年齢条件がなく(子のいない30歳未満の妻のみ5年間の限定)、遺族厚生年金を受け取れます。夫・両親・祖父母の場合は、亡くなったときに55歳以上であることが条件です。受け取れるのは60歳からになります。

 

受け取る年金額は、亡くなったひとの老齢生年金(報酬比例)額の3/4です。繰り上げで受給していても、本来の年金額で計算されます。繰り下げて増額した厚生年金を受け取っていても、本来の老齢厚生年金で計算されます。子は18歳になった最初の3月31日まで、4月1日生まれのときは前日の3月31日に18歳になったとみなされるのです。高校卒業の年までのことになります。

 

遺族厚生年金には、25年以上加入していたときの計算(長期計算)と、加入中に亡くなったときの計算(短期計算)の2通りあります。両方を満たしているときは、2通り計算して有利なほうを受け取れるのです。遺族年金を受け取るひとが65歳になったときは、自分の老齢年金と遺族年金を受け取れます。ただし遺族厚生年金と自分が受け取る老齢厚生年金との調整があります。

 

出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋
[図表4]遺族厚生年金 出典:『知らないと損する!お金の手続き年金・社会保険・介護で困らない制度』(ごきげんビジネス出版)より抜粋