都会の喧騒を離れ、自然豊かな地方で暮らしてみたい――。多くの人が一度は抱くそんな想いは、リモートワークの普及で、以前よりずっと身近なものになりました。しかし、環境を変えても誰もがそれまでのキャリアやスキルを上手く活かせるわけではありません。いざ移住を考えたとき、最大の壁となるのが「どうやって仕事を見つけ、生計を立てるか」という現実的な問題です。本記事では、ふくしまゆきお氏の著書『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』(ごきげんビジネス出版)より、「地方での働き方・稼ぎ方」を見つけるための、具体的な選択肢について解説します。
酪農未経験・意識の高い会社員「自然のなかで子どもを育てたい」…農家出身の上司の制止も振り切り、妻と幼子を連れて北海道移住。牧場をはじめた25年後「まさかの結果」
地方に住んで第2次産業・第3次産業で稼ぐ
世の中はリモートワークが当たり前になっています。移住者でフリーランスとしてIT関係の仕事やデザインの仕事を請け負っている人は多いです。リモートワークでなくても、自然豊かな地方に住んで第2次産業や第3次産業で働くことは可能でしょう。高齢化と人口減少が進む地方の工場や会社は人手不足に悩んでいるところが多いのです。
運転手不足は深刻で、バス会社では減便だけでなく路線の廃止が増えています。長電バス(本社・長野市)では、県外から入社する人に100万円を支給し、1年分の家賃も半額補助して移住しやすくしているほどです(2024年11月現在)。
医師・薬剤師・看護師などの医療福祉関係者や、税理士などの士業が不足している地域もあります。大学病院などで働いてきた埼玉県出身の薬剤師・鈴木氏は、薬局がなかった長野県の村で開業しました。村の人たちは大喜び。つながりもすぐにできました。
鈴木氏は“病院って入院している期間だけなんですよね、患者さんに関われるのって。退院された後、微力ですけど「見守る」、そういう機会があった方が僕としてもいいな、というのはありましたね。”と移住の動機を語っています※。
患者さんが健康を取り戻すまで見守れる、という目に見える成果が彼のやる気をかきたてました。資格は自然豊かな地域で暮らしたい人の武器になりますね。
第1次産業で稼ぐ
「動植物を相手にして自然のなかで働きたい!」という読者は、農林水産業の仕事を希望していると思います。成功の条件は次の2つだと思います。
②自分が溶け込める地域で、自分が望む仕事に就くこと
都会と同じ暮らし(衣食住・教育・医療福祉・娯楽)に加えて地方で必須の自家用車を所有するのか、自給自足的で生活費がかからない暮らし(サステイナブルでミニマリストだった江戸・明治時代の人たちのような暮らし)をするのかを設定する必要があります。2択ではありません。野菜は買うのかつくるのか、塾に行かせるのか行かせないのか、などどの程度モノやサービスを買ったり利用するかの初期設定=生活のイメージをもつことが必要です。
生活費を得る手段は、全収入に対する収穫物の販売収入の割合によって大きく3つに分けられます(図表参照)。
