好きな場所で働き、気の向くままに住まいを変える――。そんな「旅するように暮らす」自由な生き方が、かつてないほど現実的な選択肢となっています。そのスタイルは、現役世代だけでなく、リタイア後のシニアの選択肢としても驚くほど多彩です。しかし、その自由な生き方には、シニア世代が直面する「家を借りにくい」といった現実的な課題も。本記事では、ふくしまゆきお氏の著書『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』(ごきげんビジネス出版)より、定年後の新しいスタイルでの旅について解説します。
だからお金持ちの持ち物なのか…「キャンピングカー」のシニア旅が増えたが、「1回数千円」ばかにならない予想外の出費
キャンピングカーや車中泊の旅
手づくりの楽しみと自然のなかで過ごすよさを残しながら、テントに泊まる疲労感を低減できるのがキャンピングカーなどを使った旅です。部屋を屋外に持ち出したようなものですから快適でしょう。車のそばでたき火をし、冷蔵庫から食材を取り出してBBQをし、車に戻ってシャワーを浴びてベッドで眠れるのです。数週間も前から列車や宿を予約する必要はなく、思い立ったら休みが取れたら出かけられます。
ただし、キャンピングカーで泊まるには給水と給電がほしく、排水が必要になります。そのような設備を供給してくれるのがオートキャンプ場やRVパークです。宿泊を禁じている駐車場が多いせいか、キャンピングカーをもっている人はお金持ちが多いせいか、それらの施設を利用する人が多いようです。1泊数千円の出費が伴いますが、現代ならではの魅力ある旅行方法だと思います。
キャンピングカーの保有台数は増加を続け、2023年には15万台を突破しました。アウトドアブームや防災意識の高まりに加えて、リモートワークでどこでも働きやすくなったことが増加の要因で、今後もキャンピングカーの旅を楽しむ人は増えるでしょう。
キャンピングカーではなく、乗用車で旅をしている人も多いです。私はここ1年だけで6組と出会いました。セダンでの車中泊と旅館泊を併用した旅をしているシニアのご夫婦、犬と一緒に洗面台を付けたワンボックスで旅をしている中年の女性、軽ワゴンでの旅の途中に日帰り温泉に来たシニアのご夫婦、などです。キャンピングカーの保有台数は15万台ほどですが、そのほかの車で泊まって旅を楽しんでいる人は多いのです。軽ワゴンでも布団を敷いてフルフラットできますからファーストクラス並みですね。
漫画家の井上いちろう氏は、離婚をきっかけに軽ワゴンで泊まり、漫画を描く生活をしています。車には布団を敷けるだけでなく、仕事場としても使えるように工夫しています。旅と暮らしが一体化していますね。