定年後の自由時間は定年前の総労働時間に匹敵

私たちは定年後にどのくらいの時間や、自由に使える時間があるのか、単純な計算をしてみます。23〜64歳までの労働時間は約9万時間です(1日9時間・月20日労働として、9時間×240日×42年間=9万720時間、65歳の誕生日になったら退職)。

65〜85歳までの自由な時間や、自分の時間は、約7.6万時間もあります(1日10時間が自分の時間として、10時間×365日×21年=7万6650時間)。

60歳で定年退職の場合、それまでの労働時間約8万時間に対し、そのあとの自由時間は9.5万時間となり、定年後の自由時間のほうが長いのです。旅行や休むことなどに飽きたあと湧き上がってくるのは、「なにか仕事をしたい!」といったモヤモヤ感です。

リクルートワークス研究所の坂本貴志氏の綿密な調査と分析によると、多くの人は定年後(60歳以降)、週に数日間ストレスが少ない単純な仕事や小さな仕事をして年金の足しにしている、とのことです。

仕事はデスクワークから現場仕事になります。販売や清掃などです。定年以降の能力低下にあわせ(悲しいことですが……)、仕事の負荷も低下し続けてストレスから解放されるのです(うれしいことです)。仕事への満足度が上がり、さらには「幸福である」と答える人の割合も増えます(同調査より、50歳38%、70歳55%)。

もちろん、報道されているように老後破産で苦しんでいる人もいますし、生活費を得るため懸命に働き続けている人もいます。年金をもらっても老後の生活費がまったく足らない人は、「小さな仕事」というわけにはいきません。

大変ですが、稼ぐしかありません。しかし「多くの人はそうではない」というのが坂本氏の分析です。では、60歳以上の人たちは「小さな仕事」をしながら毎日なにを楽しんでいるのでしょうか。次頁で見ていきましょう。