一般社団法人投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書2021年(令和3年)」によると、退職金を受け取った人のおよそ5人に1人(20.3%)は資産運用のための金融商品の購入に使うとしています。しかし、周りに流されて“なんとなく”で投資を始めると、あとで後悔するケースも…。65歳元公務員の事例をもとに、投資を始める際の注意点と、失敗しないためのポイントを見ていきましょう。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典さんが解説します。※本記事は、株式会社セゾンファンデックスが運営する『セゾンのくらし大研究』からの転載です。
定年退職後にはじめた「毎月分配型投資信託」年金の足しになると喜んでいたが…60代元公務員が犯していたミスとは【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

“一極集中”はキケン…Aさんの投資手法の致命的なミス

 

投資にあたっては、1つのファンドや商品、銘柄に集中するのではなく、分散して投資することもポイントです。投資先を分散することで、リスクを抑えながら安定したリターンを目指すことができます。

 

しかしこの点、Aさんは毎月分配型のファンドに退職金のほとんどをあてていました。

 

Aさんの投資方法では、順調なときはいいものの、そのファンドがハイリスク・ハイリターンだったこともあり、ある日を境に青ざめるほどの大暴落を直視することとなってしまいました。

 

リスクの高いファンドを選ぶ際には、同時にリスクの低いファンドも購入し、リスクの分散を図ることが大切です。そうすれば、たとえ1つの基準価額がマイナスになっても、そのマイナスの程度を軽減することができます。

 

事実、Aさんが新NISA枠で購入していたインデックスファンドの運用成績はプラスとなっていました。

 

また、Aさんは一度の投資に2,500万円もの大金を費やしてしまいましたが、そもそも投資は余剰資金を使うことが鉄則。毎月少額ずつ、無理なく積み立て投資を行うことが重要です。

 

退職金以外に貯蓄もあるAさん。これからの長い老後生活のなかで、自分や家族の病気、冠婚葬祭などで、まとまった現金が必要になることもあるでしょう。

 

急な支出が必要な際に、年金収入や貯蓄だけでは賄えなくなる可能性もあります。そんなときは、基準価額がたとえ暴落していたとしても、保有している投資信託を売却せざるを得ません。含み損を抱えているなかで売却すると、損が確定してしまいます。

 

一度に大量の資金を投資に回すことには、こうしたリスクがあることも想定しておかなければなりません。投資をする場合であってもできる限り貯蓄をし、万が一の際に備えて現金や預金を用意しておくことが重要です。

 

投資は「余剰資金」で長期・分散を意識…押さえておきたい投資の基本

Aさん「長期投資、分散投資、余剰資金での投資…老後の贅沢に目がくらんで、まったく考えていませんでした。改めて自分に合った投資方法で続けていきたいと思います」

 

すでに購入してしまった投資信託は、引き続き保有することに。焦って売却せず、基準価額の推移は長期で見守ることになりました。

 

また、今後の方針については、いざというときに備え、年金収入から少額でも貯蓄に回すことにし、今後もし新たに投資信託を購入することになった場合、リスクの低い複数のファンドについても無理のない範囲で少しずつ購入することにしました。

 

昨年大きく改正され、新NISAの認知度も高まる昨今、投資を始める際はその基本的な心構えを理解することから始めることをおすすめします。

 

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

 

 

五十嵐 義典
CFP
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役