2015年に持続可能な開発目標として採択されたSDGs。メディアで見かける頻度は減り「SDGs疲れ」の潮流にもみえますが、それは日本社会にSDGsが根付いたサインとも捉えられるようです。本稿では、ニッセイ基礎研究所の小口裕氏が、「SDGs」の検索頻度の国別データをもとに日本におけるSDGs概念の定着率について解説します。
「SDGs疲れ」の空気から考える、本当のサステナビリティ-「検索データ」から見る、日・米・欧のSDGsギャップ (写真はイメージです/PIXTA)

「飽きた」のではなく「定着した」?——検索数の減少をどう読むか

2022年以降、日本でのSDGs検索(人気度)は減少傾向にあり、ピークアウトが見て取れた。これをもって「やっぱり一過性だった」と判断するのは簡単だが、慎重に捉える必要もあると思われる。

 

たとえば、人々がある言葉を検索しなくなるとき、それは「知っていて当然」の段階に入ったというサインでもあるだろう。たとえば「コロナ」や「キャッシュレス」といった言葉も、検索トレンド上では波があるが、社会から消えたわけではない。

 

実際、日本国内でも「ESG」や「Sustainability」への関心がじわじわと増えてきており、SDGsという包括語から、次の専門概念へと関心が分岐してきた可能性もある。これはむしろ、社会的な理解が「広がりから深まりへ」移行しつつある過程とも見ることができるだろう。

「持続可能性」の安定的な増加——より生活に近い言葉で「持続可能性」を語る意識の広がり

さらに、2021年以降、「持続可能性」という日本語キーワードの検索数は安定的に増加している。

 

この傾向を、サステナビリティやSDGsといったカタカナ語や英語ではなく、「日本語としての定着」の兆しと捉えると、見える風景はまた変わってくる。

 

たとえば、「SDGs」というラベルを一つの通過点とし、より生活に近い言葉で「持続可能性」を語ろうとする意識が、日常やビジネスシーンの中で静かに育ち始めているように見える。検索という行動に表れる言語選好の変化は、関心の深化や内面化の兆候とも読み取れる。

 

やや好意的な捉え方をすれば、今回取り上げたGoogleトレンドのデータだけを見ると、日本は「SDGs」という言葉を社会化させた、世界でも稀有なケースのひとつであるという可能性も浮かび上がる。

 

今後に向けて重要なのはこうした知識基盤をいかに次のテーマへとつなげていくかであろう。

 

たとえば、ESG経営への転換、脱炭素政策との接続、あるいは若年層との共創といった文脈において、SDGsを「きっかけ」として機能させながら「次」に繋げる視点が求められている。

 

そして今、「持続可能性」という言葉そのものが、ビジネスや生活の文脈で自然に使われ始めている。これは、単なるラベルを超えて、「中身のある日本の言葉」として拡張する良いタイミングであるとも言えるのではないだろうか。