厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計」によると、同居期間が20年以上の夫婦の離婚、いわゆる“熟年離婚”の割合は、全体のうち約22%と過去最高水準を記録しました。熟年離婚の危機は“おしどり夫婦”であっても突然訪れます。「予想外の離婚危機」を回避するためには、男性側と女性側、それぞれどのような点に気をつければいいのか、山﨑裕佳子FPが事例をもとに解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報を一部変更しています。
いい加減にしてくれ…「年金月27万円」「貯金4,000万円」66歳“おしどり夫婦”に訪れた老後崩壊の危機。原因は深夜2時からはじまる「妻の悪癖」【CFPの助言】
老後準備は万全だったが…高橋夫妻に“足りなかったもの”
定年退職をはじめ、これまでとは生活のリズム、スタイルが大きく変わるタイミングは、将来のライフプランと家計を見直す絶好の機会です。
高齢期において、収入の柱となるのは公的年金でしょう。支出が年金収入を上回るのであれば、働いて収入を増やすか、預金を取り崩すかのいずれかです。逆に支出が年金内であるなら、蓄えた預金をなにに使うか、選択肢が広がります。
お金の不安は、将来の見通しが定まっていないことに起因します。夫婦間の合意なく、だらだらと支出を続けていては不安は募るばかりです。まずは老後のライフプランを立て直して、家計の整理をしてみましょう。
総務省家計調査によると、65歳以上夫婦のみ無職世帯の1ヵ月の平均消費支出額は25万6,000円です。(令和6年)。武夫さん、佳代子さん夫婦の年金は月額27万円。対して1ヵ月の支出額は、通販番組での購入分を除けば23万円と平均的な支出を下回っています。日々の生活は年金で十分にまかなえそうです。
高橋夫妻の「その後」
いつも穏やかな武夫さんが「このまま続けるようなら離婚だ」と真剣に怒ったことで、ハッと我に返った佳代子さん。
一緒にいる時間が増えたことで逆に話し合う機会を失っていたと反省した2人。今後についてじっくり話し合うことに。
人生100年と考えると、まずは将来の介護費用が必要です。そこで2人は生命保険文化センターのデータを参考に、介護にかかる月額費用の平均9万円を、介護期間の平均である約5年分、そして一時的な介護費用として約50万円、これらを2人分として計1,200万円を確保しておくことにしました。
そして、介護費用を除いた預金は健康なうちに2人が納得する形で使っていくことでまとまりました。
将来の見通しが立つと、老後の不安や相手への不満が軽減されるというケースは多いです。もし熟年離婚をするかどうか悩んでいる人は、離婚という最終手段を選択する前に、将来のライフプランを真剣に話し合ってみてはいかがでしょうか。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表