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「入居お祝い金」受け取り層に偏る紹介傾向…転居意向は4割増
今回の調査では、業界内でも注目されている「入居お祝い金」の実態とその影響についても分析が行われました。入居お祝い金とは、老人ホーム紹介業者を通じて施設に入居が決まった際、紹介元から入居者または家族に支払われる金銭的なインセンティブのことです。
20代では約9割が「入居お祝い金が施設選びに影響した」と回答しており、年代別で最も高い割合となりました。受け取った金額については、全体で最も多かったのが「1万円以内」であり、特に60代以上では6割超がこの金額帯でした。一方で、入居お祝い金を受け取った人の72.3%が「紹介会社から特定の施設を強く勧められた」と答えており、受け取っていない人(35.5%)と比較して2倍以上の差が見られました。
こうした結果から、金銭的な誘因がある場合、紹介行動に偏りが生じる可能性があることが示唆されます。また、受け取り経験者からは「こちらの希望を聞いてもらえなかった」「条件に合わない施設を強引に勧められた」といった不満の声も複数寄せられており、費用や空室状況を優先するあまり、本人の生活に即した選定が後回しにされるケースも見受けられました。
さらに注目すべきは、転居意向に関する結果です。調査では、入居お祝い金を受け取った人の78.1%が「転居を検討した経験がある」と回答しており、受け取っていない人と比較して42%も高い割合となりました。これは、施設選びの初期段階で情報が不十分であったり、適切でない意思決定が行われたりしたことが、入居後の満足度低下につながっている可能性を示しています。
【現在入居している介護施設からの転居意向】
■入居お祝い金を受け取った人の転居意向…78.1%
(内訳)
他施設への転居を具体的に考え、すでに行動している…37.3%
他施設への転居を具体的に考えているが、行動はしていない…19.6%
他施設への転居について、少し考えたことがある/考えている…21.2%
■入居お祝い金を受け取っていない人の転居意向…36.1%
(内訳)
他施設への転居を具体的に考え、すでに行動している…6.7%
他施設への転居を具体的に考えているが、行動はしていない…14.0%
他施設への転居について、少し考えたことがある/考えている…15.4%
入居お祝い金は一見、利用者にメリットがあるように見えますが、福祉の公平性や透明性を損なう懸念があると業界団体からも指摘されており、倫理的な側面での議論が進められています。実際に、紹介報酬が介護度や医療ニーズによって変動する事例も報告されており、「営利性が先行し、サービス選定が歪められる」といった批判も。
「入居お祝い金」が紹介の公平性を歪める可能性が示された今、私たち利用者自身も、情報を多角的に吟味する賢い視点を持つことが求められています。
[参考資料]
株式会社LIFULL senior/「LIFULL 介護」『介護への関⼼が⾼まるお盆に向けて、LIFULL 介護が「介護施設選びの実態調査」を発表。世代間ギャップや「⼊居お祝い⾦」の影響も明らかに』