筋肉で消費できなかった「糖」は、肝臓で「中性脂肪」に化ける

「もう1つ理由があります。筋肉はエネルギーを消費する“工場”のような働きをしています。摂取したブドウ糖の7~8割は筋肉で使われるのです。だから、筋肉量が減ると使用されずに余った糖が増え、さらに肝臓に回りやすくなるんですね」

「筋肉って運動するのに必要なだけではないんですね」

「そういうことです」

「肝臓に回った糖がグリコーゲンではなく、中性脂肪になるのはなぜですか?」

肝臓でグリコーゲンを貯蔵できる量にも限界があるからです。お伝えしたように、余ったブドウ糖はまずはグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。しかしそれだけで対処できないと、グリコーゲンの6倍もの量を貯蔵できる“中性脂肪”に形を変えるのです。そして、無理やり肝細胞に押し込むわけです」

「なんと! そんなことが起こっているのですね……」

筋肉量の減少は肝臓に脂肪を増やす大きな原因になります。そこで筋肉量を判断する1つの指標が“握力”なのです」

「先生、聞いてもいいですか? 筋肉量が減ると体重も減りそうですが、体重はあまり変化がありません」

「それは、筋肉が減り、代わりに脂肪が増えてしまったからでしょうね」

「……。なるほど。体重だけではわからないということですね」

「おっしゃるとおりです。だから、スマート外来では受診時に『体脂肪率』と『筋肉量』を計測しています。今日の計測では、体脂肪率41.9%。筋肉量11.8kgでした。これからは体脂肪率を下げて、筋肉量を増やすことが1つの目標になりますよ」

「筋肉を増やせ」と言われても、運動をする時間なんて作れそうにない。

先生からの処方箋

筋肉量が少ない人は糖の貯蔵庫が少ない。だから、肝臓にもすぐ脂肪がたまる。


尾形哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医