親子だからといって、誰もが良好な関係を築けるわけではありません。子どものころに抱いた親への苦手意識や反発心は、大人になっても根深く残ることがあります。実家を離れて物理的な距離ができると、その気まずさを解消するきっかけを失い、意識的に連絡を避けるように……。やがて、親がいまどんな生活をし、なにを考えているのかまったく知らないまま、何年もが過ぎてしまいます。本記事では、Aさんの事例とともに人間関係が希薄化した現代における相続について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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おひとり様の高齢者
核家族化や少子化等により、おひとり様の高齢者は増えています。おひとり様が亡くなった場合、死後に必要な手続き等をしなければならないものの、実際にそれらの手続きをしてくれる人が近くにいないことも少なくありません。頼るべき親族がいない人や親族に頼りたくない人にとって、「死後事務委任契約」は有効な手段の1つといえるでしょう。
Aさんの父の場合は、離婚後Aさんとは別々に生活しているうちに疎遠になってしまったため、亡くなったあとの諸々の手続きを契約によってお願いしていたようです。これは推測ですが、Aさんの父はAさんの負担にはなりたくなかったのでしょう。
Aさんは、ゴミ屋敷のゴミのなかからのお宝を見つけて、父と疎遠になってしまったことを後悔していました。口数の少ない変わり者の父は、子どもとの距離感、寄り添い方がわからなかったのかもしれません。
「便りのないのはいい便り」ということわざもありますが、連絡や便りがないのは、無事である証拠であるとは限りません。特に高齢者には便り(連絡)をまめにとるようにしてほしいと願うところです。
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表