(※写真はイメージです/PIXTA)
「生活の質を落とさずに節約する難しさ」と向き合う日々
さらに、60歳で定年退職する予定の吉田さん。基本的に年金をもらうまでの5年間は無収入です。吉田家の現在の生活費は月に約25万円。これは夫婦2人暮らしの高齢世帯としては特段高いわけではありませんが、年金支給までの5年間、このペースで暮らし続けると、5年で1,500万円の出費となります。
【ともに65歳以上の無職の夫婦の1ヵ月の支出】
■支出計:25万6,521円
(内訳)
・食料:7万6,352円
・住居:1万6,432円
・光熱・水道:2万1,919円
・家具・家事用品:1万2,265円
・被服及び履物:5,590円
・保健医療:1万8,383円
・交通・通信:2万7,768円
・教養娯楽:2万5,377円
・その他の消費支出:5万2,433円
出所:総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』
無収入となる5年間。節約を心がけて支出を減らす――そう簡単なことではありません。一度でも〈節約〉を試みたことがある人であれば、生活の質を落とすことがどれほど難しいかは想像できるでしょう。本来であれば、定年を見据え、徐々に生活費の圧縮を試みるところですが、吉田家は完全に後手に回っていました。
吉田さんが思い描いていたのは、老後資金という名の〈ほとんど使わないお金〉=〈万一のときに取り崩すお金〉が2,000万円近くある、心の余裕がある生活。しかし実際は、その半分以下の金額しか残らないという未来が現実的でした。
定年退職から3ヵ月。吉田さんの姿はハローワークにありました。再就職に向けて模索中だといいます。
「いやぁ、厳しいですよ、再就職は。こだわらなければ仕事はいくらでもありますが、できれば経験を生かしたい……そう考えると結構な狭き門です。しばらくはこだわって、それでも再就職が難しければ、こだわりは捨てる覚悟です」
[参考資料]
総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』