タワーマンションの「南向き・高層階」は、日当たりや眺望、快適な住環境を求める多くの人にとって魅力的な条件とされています。ですが、住まい選びの価値観や資産価値の変動には、立地や部屋の向き、時代のニーズが大きく影響します。理想と現実、その間にあるギャップについて考えてみませんか。
悔しい…南向きのタワマンを「1億2,000万円」で買った〈世帯年収2,000万円超〉の30代パワーカップル、3年後に知った「残念すぎる現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

資産価値に影響した「方位」と「階数」

良いことばかりに思えた、田中夫婦の買い物。しかし、それでも水を差す人はいるもので、「投資としては、判断をミスったね」といわれたとか。

 

「値上がり率でいったら、もっと条件の悪い部屋を買うべきだったといわれました。確かに、同じマンションでも北向きの部屋は1割ほど安かったと思います。でも今はスゴイ値上がりしているみたいで――」

 

株式会社マーキュリーの調査によると、中古マンション市場における売却価格と新築分譲時の価格を比較した際、「北向きの部屋の値上がり率が高い」という、驚きの結果が出ました。

 

タワーマンションの20~39階の部屋において、各階、どの方角の部屋が値上がりしたか調べたところ、“南向きのタワマン”が最高値上がり率を記録したのは31階の1フロアだけで、11のフロアでは最低値上がり率を記録しました。一方で“北向き”は、1フロアで最低値上がり率を記録したものの、4フロアで最高値上がり率を記録。さらに“北西のタワマン”と“北東のタワマン”も加えると、最低値上がり率を記録したのは1フロアのみ。実に16フロアで最高値上がり率を記録したのです。

 

これはタワーマンション特有の事情があります。タワマンの場合、階数が上がるほど価格が上乗せされる仕組みで販売されることが多く、一方で中古取引では階数プレミアムが維持されるケースはあまりありません。南向きで日当たりの強さがデメリットになる場合、高層階であることが逆に「暑さ」や「眩しさ」というネガティブ要素になることも。

 

ただこの傾向、タワマンに限ったことではなく、いわゆる普通のマンションでも同じ傾向がみられることが多く、南向き住戸は「プレミアム性はあるが、買い手が限定されやすい」という指摘も。さらに2020年代以降、都市部タワーマンションの供給過多が一部地域で懸念されており、築浅であっても売却に時間がかかるケースも少なくありません。購入時に魅力的に映った「南向き・高層階」という条件が、中古市場ではむしろ売りにくさを生んでいるのです。

 

「高く買ったけど、高く売れるわけではない……ということですね。ちょっとだけ悔しい気持ちはあります」と田中夫婦。

 

あくまでも現状の話で、田中夫婦が実際にタワマンを手放すときにどうなっているかはわかりません。ただ現状、「もしタワマンを売るならば、南向きより北向きの部屋のほうが儲かる可能性が高い」というのは事実。マンション購入時、「いずれ売るかもしれない」という視点をもって考えると、また違った考えが浮かぶかもしれません。

 

[参考資料]

株式会社マーキュリー『中古マンション市場において「方位と階数」が資産価値に与える影響とは』