2012年以降に生まれたα世代。小学生のおよそ2割がSNSで「知らない人」とやりとりをし、実際に犯罪に巻き込まれるケースも後を絶ちません。多くのSNSが13歳未満の利用を禁じているにもかかわらず、なぜ子どもたちは危険なオンライン環境にアクセスできてしまうのでしょうか本稿では、ニッセイ基礎研究所の廣瀬涼氏が、α世代のリアルなSNS利用実態について詳しく解説します。
年齢制限をすり抜ける小学生たち…α世代のSNS利用のリアル (写真はイメージです/PIXTA)

3――「使えないはずのSNS」を、なぜ小学生は使っているのか?

では、なぜ小学生はこのような発信型SNSを利用していないのだろうか。この背景には、年齢制限の存在がある。InstagramやTikTok、Xといった主要SNSは、いずれも13歳以上を利用条件としており、小学生が正規にアカウントを作成することはできないからだ。そのため、彼らの主な情報源は、年齢制限が比較的緩やかで視聴中心のYouTubeのようなメディアに自然と偏っていく傾向がある。

 

出所:筆者作成
[図表4]各主要SNSの利用を禁じている年齢 出所:筆者作成

 

しかし、前述の総務省や株式会社教育ネットの調査が示すように、実際には一部の小学生が、本来は年齢制限により使用が認められていないSNSを利用している実態がある。たとえば、株式会社教育ネットの調査の小学6年生における発信型SNSの利用率を見ると、TikTokが40%、InstagramとXがいずれも21%に達している。

 

出所:株式会社教育ネット「ネット利用における実態調査(20230年4月~2024年3月)」より引用
[図表5]2023年度 小学生のSNS利用率 出所:株式会社教育ネット「ネット利用における実態調査(20230年4月~2024年3月)」より引用

 

本来であれば13歳未満はアカウントを作成できないはずのこれらのプラットフォームを、なぜ小学生が使用できてしまっているのか。いくつかその要因を考えてみた。

 

ひとつは、親のスマートフォンを借りて閲覧する、あるいは保護者のアカウントを使ってログインするといった“間接的な利用”のケースである。とくにTikTokは小学生の関心も高く、親の管理のもとで視聴している子どもも少なくない。

 

次に、年齢を偽って登録しているケースである。多くのSNSでは、生年月日の入力によって年齢制限を設けてはいるものの、厳密な本人確認までは行われていない。そのため、仮に10歳であっても、自分を16歳と偽ってアカウントを作成することは技術的には可能である。興味があれば、実際の年齢を満たしていなくとも、登録の方法を自分で調べたり、身近な友人や兄姉から教わってアカウントを作る──という行動は、いまや決して珍しいことではない。

 

さらに、家庭ごとの“親のリテラシー差”も少なからず影響している。「フィルターをかける」「親の目の届く場所でしか使わせない」「使用時間を制限する」といった明確なルールを設ける家庭や「スマートフォンの使用を一切禁止している」といった厳格な対応を取る家庭もある。通わせる学校によってはスマホを禁止している学校も存在する。

 

その一方で、「スマホを使う上でのルールを設けていない」「ノンフィルターで好きなだけ使わせる」という家庭も存在する。総務省の「2022年 我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールに関する調査8」よると、スマートフォンの利用に関する家庭内ルールが1つもない家庭が37.1%にも上る。

 

出所:総務省「2022年 我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールに関する調査」より引用
[図表6]家庭内で守らせているルール個数 出所:総務省「2022年 我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールに関する調査」より引用