「日本一高い山」は知っていても、「日本一遭難の多い山」を知っている人は多くないのではないでしょうか。現在、日本一遭難が多い山と呼ばれているのは、標高わずか599メートルの「高尾山」だそうです。断崖絶壁や厳しい天候の影響もなく、気軽にハイキングができる山として親しまれている高尾山で「遭難者が後を絶たない」のはいったいなぜなのか、『47都道府県の怖い地理大全』(彩図社)よりみていきましょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)
標高わずか599メートルだが…東京・八王子の人気行楽スポット「高尾山」の恐ろしすぎる一面。高尾山が「日本一遭難の多い山」と呼ばれる理由
エベレスト級を合算しても届かない…世界一「遭難者」が多い日本の山
世界一遭難者の多い山は、実は日本にある。それは谷川岳(たにがわだけ)だ。群馬県と新潟県の県境にそびえる三国(みくに)山脈の一部である。トマの耳とオキの耳という2つの山頂を持ち、標高は約1,977メートル。この山の遭難死者数は、2012年までに805名に及ぶ。この数には、エベレストを含む標高8,000メートル級の山を合算(640名)しても届かない。
遭難者が集中する一ノ倉沢(いちのくらさわ)・幽ノ沢(ゆうのさわ)という断崖絶壁は、蛇紋岩が多く含まれている。蛇紋岩は崩れやすく、足がかりをつくりにくい。そのため、落下事故が相次いだ。
また、同地では太平洋側と日本海側の空気が交わるため、天候も崩れやすい。こうした地形と天候の厳しさなどにより、遭難者が激増したのである。
1950年代から1970年代にかけては遭難死者数が2桁を下回ったことがなく、「世界一遭難が多い山」としてギネス認定されていた。ただし、現在はロープウェイの整備などの対策で激減し、遭難者は1980年代から2020年代の間で100名ほどしかいない。