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こんなはずでは…年金増額も後悔が膨らむ「まさかの老後」
年金支給額は、繰下げの効果もあり月23万円ほどに。「これだけあれば、年金だけで十分。安心して暮らしていける」と歓喜した田中さん。「常に平均よりもちょっと下くらいをいく人生だったけど――最後がよければすべてよし。あとはのんびりと暮らすよ」といっていましたが、そのような生活は叶うことはないといいます。
田中さんの知人いわく、年金を受け取り始め、すぐに受けた健康診断で異常が見つかり、精密検査の結果、がんが発覚。しかも結構、進行してしまっていて、現在は治療のため入院中だといいます。
最悪の事態もありうるなか、「こんなことなら、真面目に働くんじゃなかった」「早く年金をもらって、バーッと遊べばよかった」と涙していたといいます。
本来、65歳で受給開始となる老齢年金。受取開始を66~75歳と繰り下げることで、1ヵ月あたり0.7%年金が増額となる繰下げ受給。実際に繰下げ受給を選択している人は2%にも満たない少数派ですが、そのメリットからじわりじわりと選択する人が増加。定年以降も働ける環境が整い、「給与があるうちは年金を受け取らなくても暮らしていける」という人も増えているのでしょう。
ただしメリットばかりがクローズアップされる繰下げ受給ですが、「やめておけばよかった」という声があるのも事実。厚生労働省によると、2024年の日本の健康寿命は、男性が72.57歳、女性が75.45歳。あくまでも平均値ですが、仮に70歳まで年金を繰り下げたとすると、病院いらずで生活を楽しめるのは、男性の場合2年半くらいしかないということになります。
ほかにも、年金のルール上、「加給年金がもらえなくなる」「在職老齢年金制度で減らされた額は増額されない」「遺族年金は増額されない」「税金や社会保険料が増える」など、後悔のポイントがあります。しっかりと制度やルールを理解したうえで、繰下げ受給を検討すべきでしょう。
年金受取額が増額となる年金の繰下げ受給は、経済的に老後の生活を安定させる効果があります。一方で、老後の生活設計は1人ひとり違うもの。年金の受け取りのタイミングは現在、60~75歳と柔軟に決めることができるので、それぞれのライフプランに合わせて検討することが重要です。
[参考資料]
日本年金機構『年金の繰下げ受給』
厚生労働省『健康寿命の令和4年値について』