「お金のことは全部、夫に任せていました」——これは夫を亡くした多くの妻が口にする言葉です。平田泰子さん(62歳・仮名)もその一人。夫が突然この世を去った日、彼女の人生は一変しました。この記事では、平田さんの事例と共に、今からでも始められる「夫婦で取り組む資産管理」について、FPの青山創星氏が詳しくお伝えします。
(※写真はイメージです/PIXTA)
私、何もわからなくて…38年間連れ添った夫を失い悲嘆の62歳妻、遺族年金わずか「月9万円」に絶句。頼りは「残された資産5,000万円」だが、羞恥と後悔に沈んだワケ
米国株の相続の落とし穴、夫の生命保険「まさかの事実」に仰天
「平田さん、お力になりますよ」
幸い、夫の生前からの知り合いのファイナンシャルプランナーの永瀬財也さん(仮名)が親身になって助けてくれました。彼の支援がなければ、平田さんはこの複雑な相続手続きの迷宮で完全に迷子になっていたでしょう。
相続手続きを進めるうちに、さらなる問題が浮上しました。夫の投資資産には、日本国内だけでなく、海外の証券も含まれていたのです。
「米国の証券会社の口座にある米国株式の相続には、米国の税務申告が必要になります」
永瀬さんの言葉に、平田さんは呆然としました。国内の相続手続きだけでも大変なのに、海外の手続きまで?
また、夫のスマートフォンやパソコンにはパスワードがかかっており、ネット銀行やネット証券会社へのアクセスも困難でした。実際に相続手続きが完了するまでには、実に6ヵ月の時間がかかりました。その間、生活費は限られた預金を切り崩しながら、不足する分は息子さんから借りて賄うしかありませんでした。
最も衝撃的だったのは、夫が加入していた生命保険の受取人が、30年前に結婚した当初のままで、平田さんではなく夫の母(すでに他界)になっていたことです。保険金は結局、受取人である夫の母の法定相続人で分割することになり、平田さんは保険金を受け取ることができませんでした。