家計を取り巻く環境が大きく変わるなか、収入や消費のあり方にも新たな格差が生まれています。賃上げの波が一部で広がる一方、家計の実感は必ずしも明るいものばかりではありません。今、家庭のなかで何が起きているのか。総務省『家計調査』の最新結果からその実態に迫ります。
夫の給料は上がったのに…妻の収入「8.8%減」の現実。家計を襲う「世帯内格差」と「コト消費」活況の裏側 (※写真はイメージです/PIXTA)

活気づく「コト消費」、日常の「モノ」には厳しい目

総務省が6月6日に発表した2025年4月の家計調査は、日本経済の回復基調に潜む複雑な実態を浮き彫りにしました 。

 

今回の調査で特に目を引くのは、消費の中身における明確な濃淡です。全体としては実質マイナスに陥ったものの、一部の分野では力強い伸びが確認されました 。その筆頭が、旅行や外食、エンターテインメントといった「コト消費」に関連する分野です。

 

教養娯楽は実質7.9%増と3ヵ月連続のプラス成長を遂げました 。内訳を見ると、教養娯楽サービスが7.5%増、テレビやパソコンなどの教養娯楽用耐久財も39.7%増と、体験とそれに付随するモノへの支出がともに活発化している様子がうかがえます 。交通・通信も自動車等関係費に牽引される形で実質2.4%増と、3ヵ月連続で増加しました 。食料費が8ヵ月ぶりに実質プラス(0.3%増)に転じたのも、主に外食(2.5%増)が押し上げた結果であり 、人々の活動が屋外へと向かっていることを裏付けています。

 

さらに、教育費が実質5.1%増と2ヵ月連続のプラスとなったことも見逃せません 。特に、私立中学校の授業料などが含まれる「授業料等」が実質9.8%増と全体を牽引しており 、子どもの教育に対する投資意欲の高さを示しています。

 

一方で、日常生活に密着した「モノ消費」は依然として厳しい状況にあります。被服及び履物は実質2.1%減と4ヵ月連続のマイナス 、家具・家事用品も実質0.4%減と2ヵ月ぶりのマイナスに転じました 。ティッシュペーパーや洗剤などの家事用消耗品が実質2.0%減となっている点からは 、日々の暮らしにおける節約志向の根強さが透けて見えます。

 

光熱・水道費が4ヵ月ぶりに実質マイナス(1.2%減)となったのも 、電気・ガス料金の値上がりが続くなか、使用量を抑えようとする家庭の防衛的な姿勢の表れと解釈できるでしょう。このように、消費者は、旅行や教育といった価値を認める分野には積極的に支出しつつも、日々の生活コストに対してはシビアな目を向け、支出を切り詰めるという選別行動を強めていることが読み取れます。