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分配金受取型の投資信託をめぐる議論
報道によれば、プラチナNISAでは「分配金受取型投資信託」が対象商品に含まれる可能性がある。この点に関し、特別分配金による元本の取り崩しリスクや手数料の高額さから批判の声も上がっている。しかしながら、この分配金受取型投資信託が対象商品に含まれること自体を問題視する批判は本質的でないといえる。
まず、元本の取り崩しリスクのある商品性を問題とするのであれば、それは高齢者やプラチナNISAに限った問題ではなく、証券市場全体の制度設計や法規制の問題にまで議論を広げる必要がある。
また、最終的な投資判断はあくまで利用者自身が行うものであり、プラチナNISAが分配金再投資型に限定/誘導するような制度とならない限り、利用者に不当なリスクを押しつける制度とまではいえない。特に、先のとおり高齢者には資産の取り崩しという特有のニーズが存在することから、多様な選択肢を提供すること自体に合理性はあるともいえる。
高齢者の投資判断能力と制度設計上の課題
一方で、高齢者がリスクを伴う投資に適切な判断をもって臨めるのかという点は、制度設計以前の大きな懸念点といえる。
金融広報中央委員会が実施する「金融リテラシー調査」によれば、たしかに金融リテラシーは年齢層が高いほど高くなっている(図表2)。しかし、ここでいう金融リテラシーは金融に関するクイズ設問の正答率であり、いわゆる認知判断能力を測定しているものではない。
同提言では、詐欺被害対策を含めた金融経済教育の徹底や、親族等の代理取引を可能とする金融サービスの普及促進など、高齢顧客保護の観点から認知判断能力の低下に備えた検討されているが、高齢者がそうした制度的な支援を適切に利用できるかどうかは疑問が残る。
また、現行NISAと同様であれば、プラチナNISA口座で運用された資産は相続時に相続人の課税口座へ移管されることが想定される。その際、半ば強制的にリスク資産を受け入れる相続人の資産管理能力を踏まえた制度的手当の要否についても議論の余地があるといえる。
利用者保護と健全な市場形成の両立が課題
投資はあくまで「自己責任」が原則であるが、現実には高齢者を狙った金融犯罪や不適切な勧誘も後を絶たない。
制度として功利的な効果を生み出すためには、単に非課税枠や対象商品を広げるのではなく、利用者保護と健全な市場形成の両立を意識した設計が不可欠である。
プラチナNISAは、日本社会の高齢化と家計金融資産の構造的課題に対応する新たな試みであると同時に、慎重な議論と制度設計が求められる政策でもある。今後の動向が注目される。
