ライフステージの変化に伴い、多くの人が検討する生命保険の見直し。その相談先として身近なのは保険ショップや勤め先や自宅に訪れる保険会社の担当者などでしょう。しかし、「あなたに最適なプランを」という提案が、必ずしも家計全体にとって最善とは限りません。本記事では梶原さん(仮名)の事例とともに、生命保険の見直しにおける注意点について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
俺たちはカモだったのか…世帯年収650万円・地方在住40代共働き夫婦が愕然とした「20年間でムダ金400万円」。原因はショッピングモールに佇む「保険ショップ」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

保険ショップで提案された見直し案

梶原さんが保険ショップで伝えたのは、

 

「保険料のムダをなるべく省きたいので、死亡保障は妻と子どもが困らない必要最小限にしたい。一方で、医療保障は終身保障にするなどいまよりも少し充実させたい」

 

「妻にはパートを60歳までは続けてほしいと考えている」

 

という2点でした。

 

保険ショップのベテラン相談員は、梶原さんに万一のことが起きた場合に備え、残された家族の収支について以下のように試算しました。

 

1.生涯支出(合計):1億2,532万円

・生活費

・住居関連費(団体信用保険により住宅ローンの残債は免除されるため、管理費や固定資産税などを考慮)

・教育費など

 

2. 収入・資産(合計):1億209万円

・現在の貯蓄額

・公的な遺族年金(※相談時は制度改正議論前の情報で試算)

・配偶者自身の65歳以降の老齢基礎年金

・児童手当

・梶原さんから聞いた死亡退職金予想額

・配偶者のパート収入(60歳まで、年100万円として試算)

 

保険ショップ相談員は「計算上の必要死亡保障額は差し引き2,323万円となります。この計算に基づいて提案をさせていただきますね」とテキパキと説明を続けました。

 

将来の私的年金にもなる現在の終身保険250万円をそのまま残しつつ、死亡保障は収入保障保険に変更。医療保険についても、3社のプランを比較しながら、終身型の保障内容を提案されました。この見直し案では、死亡保障額が増え、医療保障も充実させながら、毎月の支払保険料合計は加入中保険の更新後保険料と比較して「減額」されるとのこと。

 

梶原さんも「いまの保険のままだと更新後には月々2万3,500円になるし、悪くない内容だな」と見直し案におおむね賛成しました。

保険営業のカモになる人の共通点

必要死亡保障額をどんぶり勘定ではなく、公的年金なども含めてしっかりと計算した、プロフェッショナルにみえる今回の保険見直し相談。しかし、実はここに根本的な問題があります。

 

それは「保険のプロに保険の見直し相談をすると、保険という商材だけでの解決策を提示してくる」ということです。無料相談の主な目的が保険販売である以上、これはある意味当然かもしれません。保険ですべてを解決しようとすると保険営業のカモになってしまいます。