ライフステージの変化に伴い、多くの人が検討する生命保険の見直し。その相談先として身近なのは保険ショップや勤め先や自宅に訪れる保険会社の担当者などでしょう。しかし、「あなたに最適なプランを」という提案が、必ずしも家計全体にとって最善とは限りません。本記事では梶原さん(仮名)の事例とともに、生命保険の見直しにおける注意点について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
俺たちはカモだったのか…世帯年収650万円・地方在住40代共働き夫婦が愕然とした「20年間でムダ金400万円」。原因はショッピングモールに佇む「保険ショップ」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

保険販売を手掛けない専門家からのアドバイス

今回梶原さんは、別途知り合いの保険販売を手掛けない専門家にも再度確認をしてみました。そこで受けたアドバイスは、保険云々以前に次のような点を詳細に検討していくことでした。

 

●妻の就労について:

・現状の年収100万円のパート勤務は、梶原さんに万一のことがあったあとも現実的か?

 

・梶原さんに万一のことがあった場合、子どもがある程度大きくなったあとは、パートの勤務時間を増やしたり、フルタイム勤務や正社員としての再就職を検討したり、より積極的に働くことを前提にしてもよいのではないか?

 

●教育費の準備について:

・大学進学費用に関して、現在広く利用されている奨学金制度の活用は考慮しなくてよいのか?

 

・梶原さんに万一のことがあった場合に、双方の実家から娘の教育費の一部を援助してもらえる可能性はないのか?

 

●住まいと生活基盤について:

・妻の実家の状況はどうか?

 

・たとえば梶原さんに万が一のことがあった場合には購入したマンションを売却する、または賃貸に出す一方で、妻と娘が実家に戻り住むという選択肢は非現実的か?

 

●医療保険の必要性について:

・充実した公的医療制度(高額療養費制度など)や、梶原さんの現在の預貯金額からして、医療保険は本当に必要か?

 

・もし公的保険適用外の先進医療などが心配であれば、それだけに特化したワンコイン(月500円)型の商品もある。

 

梶原さんは「保険ですべてを解決しようとしていました。俺たちはカモだったのか……」と目から鱗が落ちる思いで、妻とも話し合うことに。

 

話し合いにより、妻の意見も知ることができました。もともと娘の中学入学以降はフルタイム勤務に戻りたいと考えていたこと、梶原さんに万一のことが起こった場合は一人っ子の妻は実家に戻れること。

 

さらには、梶原さん自身の親も梶原さんに万が一のことがあった場合に、多少なりとも孫の教育費をサポートする金銭的余裕があるようです。また、梶原さん自身、医療保険に関しても確かにこの程度の保障のためであれば毎月の保険料をそのまま貯蓄や投資に回すほうが合理的に思えてきました。

 

結果、梶原さんのケースでは民間の保険はほぼ要らないという判断になったものの、高齢の親に頼る対策が中心であることにも一定の不安が残るので、子どもが大学を卒業するころまでをカバーできるよう、ネット型生命の定期保険(保険期間20年、死亡保険金1,000万円)に加入することを決めました。

 

この場合の毎月の保険料は約3,500円です。いまのままの保険が更新された場合と比較すると月2万円もの差が出てきます。これは20年間で480万円の節約を意味しますし、保険ショップのお勧め見直しプランと比較しても20年間で400万円以上の保険料の削減です。

 

このように、生涯のマネープランは保険以外の解決手段も十分に吟味したうえで、保険をどう利用するか検討することが重要です。梶原さんの場合は節約できた毎月の保険料を使い、別途興味を持っていたNISA口座を開設して毎月2万円の積立投資を始めることにしました。

 

 

山田 信彦

ニックFP事務所

代表