誰もが直面し得る「介護」。特に超高齢社会の日本では、要介護認定を受ける人が年々増加し、多くの家庭で身近な問題となっています。しかし、いざその時が来てから慌てないためにも、介護保険制度の基本や「要介護」「要支援」の違い、そして具体的な兆候を知っておくことが重要です。本記事では、山口一夫氏の著書『シニアライフの人生設計』(ごきげんビジネス出版)より、高齢者の介護の実態について解説します。
誰が介護を担うのか?
要介護者などから見た主な介護者の続柄を見ると、同居している人が54.4%となっています。主な内訳を見ると、配偶者23.8%、子20.7%、別居の家族など13.6%、事業者12.1%、子の配偶者7.5%。性別については、男性35.0%、女性65.0%と女性が圧倒的に多くなっています。
要介護者などと同居している主な介護者の年齢を見ると、60歳以上の男性72.4%、女性73.8%であり、「老老介護」のケースも相当数存在していることがわかります。介護者の世話について時間の面から見てみましょう。
同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間を見ると、「必要なときに手をかす程度」が47.9%と最も多く、「ほとんど終日」が19.3%。
当然のことですが、要介護度別に見ると、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が最も多くなっています。要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなり、要介護4では45.8%、要介護5では56.7%でした。
以上は同居している介護者の介護に要する時間でしたが、別居家族が介護者を支援する状況については残念ながら調査データがありませんでした。参考までに、私が要介護1と認定された父を別居家族として支援した際の経験から少しお伝えします。
まず私が行ったことは、心療内科の医院長の助言に従い、父の金融資産をすべてチェックし、弟とも相談したうえで私がすべて管理するように変更したことです。父は老人施設へのデイ・サービスを嫌ったので、かわりに地域包括支援センターの紹介で1週間に一度、父の話し相手に来てくれる人を紹介してもらいました。
幸いにも父の住む実家は私の通勤経路の途中に位置していたため、平日の通勤帰りと週末の土曜か日曜の週2回を目安に支援を開始。平日は一緒に夕食をとり、週末はもっぱら父をお風呂に入れ、洗濯をしました。支援を開始してから1年近くは、この連携でなんとか乗り切っていましたが、父が熱中症にかかり緊急入院してからは環境が激変。
結論として、通いで自分たちが父を支援することの限界を悟り、地域包括支援センターと相談し、父を老人施設へ移す覚悟をすることとなりました。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/s1_2_2.html
山口 一夫
ライフデザイン講師