たとえ現役時代十分な収入があり、資産が潤沢にあっても、無計画にお金を使ってしまうと資産が枯渇してしまう可能性があります。特に収入が限られる年金生活においては、家計を見直し、将来の支出の見通しを立てることが大切です。事例をもとに、山﨑裕佳子FPが、老後破産危機に陥る原因と回避策について解説します。
いいよいいよ、私が出すから…〈年金月20万円・貯金6,000万円〉70歳女性がまさかの「老後破産危機」それでも散財をやめられない“切実な理由”【FPが解説】
実は…ひろ子さんが告白した「お金の使い道」
FPが普段のお金の使い方について尋ねると、ひろ子さんの暮らしは、決して派手なものではありません。食事も基本的には自炊です。
ただし、自身の身体のことを考えて、なるべく無添加や無農薬のものを選ぶなど、食品や調味料にはこだわっています。そのため、食費は平均的な1人暮らしよりも少し高め。それでも、年金額や資産額から考えれば、問題があるようには見えません。
するとひろ子さんは、決まりが悪い様子で、次のように言いました。
「実は……。夫の遺産を相続した5年前から、娘家族と息子家族に、それぞれ生活費の一部を援助しているんです。
お正月やお盆に帰ってくるときの帰省費用やそのときかかる食費や交通費、さらに毎年恒例になっている温泉旅行についても、全額私が負担しています。
収入がないのだから支出をおさえなきゃとは思うんですが、子や孫と出かけると、つい『いいからいいから、私が出すから』って払ってしまうんです」
どうにかしなきゃとは思うものの、正確にはいくら使っているのか把握していないといいます。そして、FPに相談したいこととして、次の4つを挙げました。
1.自分の老後資金として、いくら残しておけばいいのか
2.子世帯(娘家族・息子家族)へそれぞれ住宅資金を援助したいが可能か
3.孫が私立中学へ入学した際には、教育資金の援助をしたいが可能か
4.資産の運用はどうしたらいいか
これを踏まえ、FPはひろ子さんの年間収支を可視化することに。収入は年金のみなのですぐにわかりますが、支出について尋ねると、ひろ子さんは肩をすくめて次のように言いました。
「私、家計簿とかつけたことがなくて……」
ひろ子さんは、子世帯への援助だけでなく、日々の生活費についても、いくら使ったか記録したことがないといいます。幸いにもこれまでお金に困ったことがなく、支出額を把握していなくても支障がなかったようです。
そこで、まずは3ヵ月間、生活費の支出を記録してもらうことにしました。加えて、年単位で支出している項目についても洗い出してもらうようお願いしました。