日本社会において、大企業のミドル・シニア層が持つ豊富な経験と知的資本が、十分に活かされていない現状があります。転職による給与待遇の低下や年齢による採用の壁が、彼らの流動化を阻む要因となっているようです。しかし、ミドル・シニアの活躍の場を広げることは、労働力の増加や社会全体の生産性向上につながる重要な課題です。本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、ミドル・シニアの流動化の重要性について解説します。
転職すると給与待遇が悪くなる…いま、日本社会で最も持て余されている「大企業のベテラン社員」活躍の秘策
社会において適材適所を見つける
以上、社会全体としてミドル・シニアの流動性を高める必要性は、これでお分かりいただけると思います。「社会レベルでのジョブローテーション」とは、社内でジョブローテーションが適材適所を生み出すように、社会での適材適所を見つけられるようにすることです。一企業内よりも社会全体で考えたほうが、その多様性からマッチングの確率は高くなるはずです。
例えば、特定の企業では行わなくなった事業も、社会全体で見ればニーズがあり、存続しているケースは少なくありません。社会レベルでのジョブローテーションがあれば、特定の企業に存在していた知的資本を死蔵、失わせてしまうことを防げます。この社会レベルでのジョブローテーションは、転職の促進と同じではないかという意見があるかもしれません。しかし、転職はあくまで個人と個社の個別的な活動です。社会全体として、ミドル・シニアが企業横断的に仕事を選びやすい状況を創り上げることが必要と考えます。
宮島 忠文
株式会社 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長
小島 明子
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト