人生の選択は多様化し、「結婚しない」という生き方を選ぶ人も増えています。特にミドル・シニア世代の未婚率は年々上昇し、いまや男性の約3割、女性の約2割が生涯未婚となる時代。自由な生き方を選ぶ一方で、彼らが抱えるのは本当に「自由」だけなのでしょうか? 本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、データが示す未婚ミドル・シニアの実態を紐解いていきます。
「50歳で独身」急増、「友人0人」半数以上…孤独迫る「ミドル・シニア未婚者」なぜ若いうちに結婚しなかったのか?
孤独・孤立の予備軍…人間関係の希薄化
一方、ミドル・シニア未婚者の交流関係を見ると、人間関係が希薄化している様子も浮かび上がってきます。友人の数は、「年齢が10歳以上若い友人」は「0人」という回答が、男性では66.8%、女性では59.6%と約6〜7割に上ります。「悩みごとを相談できる友人」は男性では「0人」という回答が50.4%と最も多くなっていますが、女性では、「2〜3人」という回答が42.0%と最も多くなっています。
様々な相手と「共食(共に食事をすること)」する頻度を尋ねた設問では、「家族」について「毎日」を選択した人が最も多く約3割です。その他の相手については、「全くない」という回答が最も多く、「仕事の知り合い(職場の人除く)」は約6〜7割、「学生時代の友人」「社会人になってからの友人」は約4〜6割、「地域の人」は約9割に上ります。男女別に比べると、「学生時代の友人」「社会人になってからの友人」については、女性のほうが男性よりも「共食」をする相手がおり、頻度もやや高めである状況が窺えます。
以上から、年齢が10歳以上若い友人がいない人は男女ともに半数以上に上るものの、女性のほうが男性よりも悩みごとを話せる友人が多く、食事をする友人との共食の頻度が高いことが分かります。調査の対象者は皆仕事をしていますが、特に男性においては、働いていても人間関係が希薄であり、退職後の孤独・孤立の問題が生じることが懸念されます。
しかし、同調査では、定年を問わず、できるだけ長く働き続けたいと考えている人が半数弱に上ることも分かっています。働きたい人が何歳になっても働き続けられる社会をつくっていくことは、人手不足の解消や、経済的な問題を抱える高齢者を減らすことにとどまらず、日本社会が抱える孤独・孤立の予防という重要な意味を持つと考えます。
宮島 忠文
株式会社 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長
小島 明子
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト
