安定した職業と十分な退職金があっても、計画を誤れば老後破綻は誰にでも起こり得ます。それは、安定した職業として広く認識されている立場であっても例外ではありません。今回は、元公務員の66歳男性の事例をもとに、“思わぬ老後破産危機”を防ぐための対策についてみていきましょう。
こんな親父ですまん…年金月30万円・定年退職金2,500万円の66歳元公務員男性が「まさかの老後破産危機」新婚の30歳長男に借金をねだったワケ【FPが警告】
こんな親父ですまん…借金を頼まれた息子の反応
Aさんは、明日までに数百万円の追加保証金を差し入れないと、取引が強制終了になってしまいます。
「もう少し我慢すれば、また上がるはずなんだ……!」
運用がうまくいっていると伝えている手前、妻だけには知られたくありません。しかし、すでにAさんが自由に使えるお金はほとんどない状況です。
Aさんは、恥を忍んで長男のCさんに相談することにしました。Cさんは一部上場企業に勤めており、新婚で夫婦共働き。資産に余裕があるだろうと考えたのです。
「もしもし? 突然ごめんな。あのさ……、こんな親父ですまん。頼む、至急ちょっと金を貸してくれないか?」
常識的に考えて、こんなお願いに黙ってお金を用立てしてもらえるはずもないのですが、Aさんはそれだけ追い詰められていたのです。
案の定、Cさんはピンときたようです。
「……なにをやったの? FX? 仮想通貨?」「で、母さんは知ってるの?」
なにも返せずAさんが狼狽しているうちに、「わかった。今日とりあえずそっち行くから」と息子は自宅を訪ねてきました。
そして、息子にこんこんと説教された挙句、Aさんの取引は強制終了。妻にもすべて知られるところとなりました。
4,000万円以上あった通帳の残高は、半分近くに減少。わずか数ヵ月のあいだに、2,000万円近くが水の泡となったのです。
資産運用は、まずは“小さくゆっくりと”
SNSや周囲の声に流され、リスクの本質を理解しないまま踏み込んだ信用取引は、Aさんにとってあまりに大きな代償をともなうものとなりました。
しばらく茫然自失で過ごしていたAさんでしたが、いまは失った金額を少しでも取り戻すべく新たに仕事を開始。投資はもうこりごりです。
もしあなたがこれから資産運用を始めようとしているのなら、投資商品や仕組みを正しく理解してから始めることがなにより大切です。そして、まずは小さく、ゆっくりと。そして、自分のリスク許容度を見極めるところからスタートしてみてください。
石川 亜希子
AFP