糖尿病専門医の大坂貴史氏によると、実は血糖値を上げにくい麵として、そばとならんで「パスタ」がおすすめだといいます。麺類のなかでもカロリーが高そうに思えるパスタですが、どのような理由でおすすめなのでしょうか? 大坂氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より見ていきます。
意外すぎる…血糖値を気にする人には「パスタ」がおすすめなワケ【糖尿病専門医が解説】
血糖値を上げないために「パスタを食べるべき」理由
採血と体重などの測定、エコー検査が事前に行われ、その後、診察室に呼ばれた。
「坂田さん、調子はいかがですか?」
「正直、体感として大きく変化したことはありません。3食とも主食を食べるようになって、食べすぎていないかが不安です」
先生は検査結果のデータをじっと見つめている。
「食後血糖値が142、ヘモグロビンA1cが6.2%。いい調子ですよ!」
私としては、ヘモグロビンA1cがもう少し下がることを期待していたが……。
「ヘモグロビンの値はあまり変わっていないですが、大丈夫なんでしょうか」
「前回が6.4%で今回は6.2%ですね。先日もお伝えしたように、ヘモグロビンA1cは1〜2か月の血糖値の平均を見る指標です。だから、1か月で急激に下がるものではないのです」
「なるほど……」
「それに前回と比べて食生活を大きく変えたところは、主食をしっかり食べた点だと思います。主食を食べても血糖値が上がらなかった。むしろ、下がった可能性があるということなんですよ。これは1つの安心材料です。すばらしい!」
先生がやけにほめてくれるので、気恥ずかしくなった。
「食事面で困ったことはありませんでしたか?」
「朝食は、子どものお弁当用のご飯でおにぎりにしたり、卵焼きのはじを食べたり、ミニトマトをかじったりしながら、それほど苦労なく食事ができています」
「それはいいですね!」
「昼食はパスタを食べていいのか迷いました。カロリーも高そうですし」
「それで、どうしましたか?」
「1か月の間に2回食べました。ランチはサラダかパンを選べるお店なので、サラダにしました。ドリンクはアイスティーを選びました。ガムシロなしで」
「バッチリだと思います。パスタは基本デュラムセモリナという粗びきの小麦からできているので、完全に精製される手前のものです。だから、そばと同様、血糖値を上げにくい麺としておすすめできますよ。タンパク質も摂れますしね」
パスタとタンパク質が私の中では結びつかなかった。
「パスタにタンパク質が含まれるんですか? 糖質は多いと思いますが……」
「糖質ばかりに目を向けていると、食品に含まれるほかの大事な栄養素を見落としがちになります。それはもったいないですね。食品にはさまざまな栄養が含まれていて、それを複合的に食べることで健康維持に役立てることができます。パスタにはタンパク質が含まれます。1食で必要なタンパク質を完全に満たすとまではいかないですが、ゆでたパスタ240gのタンパク質量は14gほど。1食で20g程度摂るのが目安なので、そこそこ満たすことができますね」
「そうなんですか。意外でした」
「ただ、坂田さんがおっしゃるように、そばと比べてカロリーが高い点は否めません。毎日、ランチはパスタというようなことは避けてほしいです。とはいえ、食べてはいけないことはありませんよ」
「わかりました。ありがとうございます」
私がイメージする“糖尿病食”との違いに、おどろくばかりだ。
糖質ばかりに目を向けず食品が持つ栄養素の恩恵を受けよう!
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医