定年を数年後に控え、「そろそろ老後資金の確認を」と通帳を手に取った地方のメーカーに勤める会社員の松田さん(57歳)。ところが、そこに記載されていた残高は自身の想定を大きく下回るものでした。家計管理は長年妻に任せきりで、収支の詳細を把握することなく過ごしてきた日々。その「無関心」が老後の生活設計を狂わせてしまうことに……? 今回は松田さん夫婦の事例を元に、夫婦の家計管理における注意点と解決策について、CFP®の伊藤寛子氏が解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
堅実にやってきたはずなのに、なんでだよ…年収700万円・57歳の会社員、妻の差し出した通帳に絶句。定年まであと3年、安泰の老後が揺らぐ「まさかの事態」【CFPの助言】
「信頼して任せていたつもり」が「無関心だった」
「子どもの進学や車の買い替え、いろいろ出費が重なって、 私なりにやりくりしてきたつもりだけど、なかなか貯められなかったの」
妻の言葉に、言い返すことができなかった松田さん。「もっと早く、一緒にお金のことを話しておけばよかった……」と後悔の念に駆られました。
「信頼して任せていたつもり」が、実は「無関心だった」ことに、この瞬間初めて気づいたのです。
結婚当初は共働きで、財布も別々だった松田さん夫妻。妻は出産を機に退職し、後に扶養内のパートで働き始めましたが、家計の中心は松田さんの収入でした。松田さんは仕事に忙殺され、お金の管理も苦手。家計は自然と妻に任せるようになっていきました。
松田さんは「妻が貯金してくれているはず」と思っていましたが、月12万円の住宅ローンの返済、2人の子どもの成長とともに増える教育費や生活費、家族旅行や帰省費用、娯楽費も多く、「残った分を貯めていく」という貯蓄スタイルでは、なかなか通帳の残高は増えていきませんでした。
それでも、夫の収入と、一部自分の収入からも補填することでやりくりできていたため、妻が松田さんに相談することはありませんでした。お互いにお金の報告や共有、収支の確認をすることなく、ここまで過ごしてきたのです。