定年後の第二の人生には長年勤務した会社に勤め続けるだけでなく、転職や起業といった選択肢もあります。しかし、よかれと思ったチャレンジが失敗に終わるケースは珍しくありません。場合によっては経済的に苦境に陥るおそれもあるでしょう。ある事情で定年後に自営業を選択した池田さんの事例から、セカンドライフで起業を選択する場合の注意点とリカバリーについて、CFPの松田聡子氏が解説します。

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セカンドライフの選択で感情より優先すべきこと
セカンドライフでの起業は必ずしも悪い選択肢ではありませんが、池田さんのケースから学ぶべき教訓があります。
「自分を冷遇した相手を見返したい」という感情は事業を成功させるエネルギーになりえますが、冷静な判断を鈍らせる諸刃の剣でもあります。特に元手がかかる事業に投資する場合は、より慎重な計画と準備が必要です。事業計画を立てる際には、ゆとりある資金準備、予期せぬ事態への備え、十分な市場調査が不可欠です。
ただし、「人生最後のチャレンジ」に失敗したからといって、すべてが終わったわけではありません。池田さんは生命に別状はないため、無理のない範囲での就労を希望しています。
仕事に就いて社会とのつながりを持つことは生きがいにつながり、心身にプラスの効果をもたらすでしょう。また、夫婦で助け合って生きることも、お金には換えられない幸福な老後生活といえます。
セカンドライフの選択では感情よりも冷静な判断を優先し、健康リスクと資金計画を念頭に置いた慎重な決断を心がけましょう。
松田聡子
CFP®