定年後の第二の人生には長年勤務した会社に勤め続けるだけでなく、転職や起業といった選択肢もあります。しかし、よかれと思ったチャレンジが失敗に終わるケースは珍しくありません。場合によっては経済的に苦境に陥るおそれもあるでしょう。ある事情で定年後に自営業を選択した池田さんの事例から、セカンドライフで起業を選択する場合の注意点とリカバリーについて、CFPの松田聡子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
見返してやりたかった…退職金と貯金で老後資産3,000万円の元専務、60歳で実質的な“左遷”の屈辱。「人生最後・逆襲の挑戦」に打って出るも、老後危機に転落の顛末【CFPの助言】
逆襲のジェラート店経営が招いた、まさかの老後危機
池田さんには退職金が1,500万円と貯金が1,500万円あり、ここから1,000万円をジェラート店経営の軍資金にすることにしました。
年金受給が始まる65歳までは、ジェラート店の売上で生活していくのです。こうして池田さんは60歳で会社を退職し、人生最後のチャレンジのつもりでジェラート店を引き継いだのです。
ところが、いざ始めてみると店の毎月の収支は赤字スレスレで手元にお金はほとんど残りません。さらに冬場に入ると客足は激減。スープやクレープといった温かいメニューも投入しましたが、効果は思うように上がりません。
前オーナーはサイドビジネスのために気にならなかったかもしれませんが、収入源がジェラート店しかない池田さんには死活問題です。パート従業員の急な退職もあり、池田さん自身が朝から晩まで立ち働く日々が続きました。
そんななか、慢性的な倦怠感と関節の痛みを覚え始めました。医師の診断はリウマチでした。生命に関わるほどではないものの、冷たいジェラートを扱う仕事は池田さんには大敵です。
ついに開業から2年後、ジェラート店の継続を断念。退職金と貯金から約1,800万円が目減りし、今後の高額な治療費という新たな不安も抱えることになってしまったのです。
「二代目社長を見返すどころか、自分の身体を壊してしまいました」
60歳からの人生最後のチャレンジは、想像もしなかった老後危機を招いてしまいました。