国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、日本で年収1,000万円を超える人の割合は、給与所得者全体の約5.5%といわれています。そんなひと握りの“年収1,000万円プレイヤー”ですが、実は老後お金で苦労する人が一定数いるそうです。55歳・地方銀行員のAさんの事例をもとに、その原因と老後破産を避けるための対策をみていきましょう。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。
年収1,000万円・年金月20万円見込の55歳地方銀行員、役職定年で「社宅」を退去→5年後…当時の部下と再会した「まさかの場所」に部下、絶句【FPの助言】
Aさんが入居を拒否されるワケ
今回のAさんの事例のように、定年後に賃貸物件を探そうとすると、入居を断られてしまうケースは少なくありません。賃貸物件のオーナーからすると、無職の高齢者に物件を貸すと「家賃を滞納されるのではないか」「部屋で亡くなって事故物件になるのではないか」というリスクがあり、貸し渋りが起こることがあるのです。
「タワマンではもう暮らせない。でも、家がないと困る……」
Aさんは渋々、賃貸物件契約のためにアルバイトを始めることに。貯蓄がないAさんは生活費も稼ぐ必要があり、コンビニと警備のアルバイトを掛け持ちすることにしました。
「くそ、年金がもらえるまでの辛抱だ……」
周りの知り合いにバレては恥ずかしいと、勤務先はあえて生活圏から離れた場所に設定していたAさん。
しかしある日、Aさんが「いらっしゃいませ」と顔を上げると、地方銀行時代にかわいがっていた部下が入店してきました。
「おいまじかよ。やばい、見つからないでくれ……」
必死に顔を背けますが、Aさんの祈りも虚しく、レジに来た部下は店員がかつての上司であることに気がついたようです。
驚きのあまり言葉が出ない部下に、Aさんは言いました。
「よっ……元気か? 頼む、みんなには言わないでくれな」
精いっぱいの笑顔で取りつくろうその表情に以前の威厳や貫禄は微塵もなく、ただただ悲哀が滲んでいました。
Aさんはどうすべきだったのか
Aさんは年収が高く、退職金もしっかり給付される銀行に勤めていました。
しかし、マイホームを買う、子どものために使うといった明確なライフプランもなかったことから、毎月の給料を使い切っても「また来月になればお金は入ってくる」と貯蓄をしない生活に慣れ切っていたのです。
そのため、役職定年となり給料が下がっても、その後定年退職してからも生活水準を下げられず、苦境に陥っています。
Aさんのような事態にならないためには、現役のうちから定年後の生活をシミュレーションしておく必要があるでしょう。