“独身貴族”のAさん

Aさんは、新卒で地元の銀行に就職し、55歳まで銀行員として働いてきました。役職定年時の年収は約1,000万円。特定のパートナーはおらず、いわゆる“独身貴族”。単身世帯向けの借上社宅に暮らすAさんは、家計のなかでもっとも負担の大きい家賃もほとんどかかりません。

散財しなければ貯蓄はしっかりできるはずですが「これだけ会社に貢献しているし、クビになることもない。退職金もしっかりあるから」と、稼いだお金は派手に使い、その月のうちに使い切ってしまいます。

コミュニケーション能力が高く気前のいいAさんは、よく部下たちを飲みに誘います。当然、飲み代はすべてAさん持ち。誘う部下がいないときは、1人でスナックやバーへ繰り出しました。

そのため、若いころからお金を貯める習慣はないまま、現在に至ります。

役職定年となり、社宅を追い出されるハメに

部下からは慕われていますが、役員までのぼりつめることはできず、55歳で役職定年となったAさん。これを機に、住まいである社宅を出ていかなくてはならなくなりました。

プライドが高く「年収1,000万円」という自負もあったAさんは、見栄を張ってタワーマンションを借りることに。

憧れのタワマン暮らしにホクホクのAさんでしたが、固定費が急増したにもかかわらず生活水準を落とすことができず、お金は湯水のように消えていきます。気がつけば60歳を超え、銀行での雇用は終了。貯蓄はほとんど底をついてしまいました。

「年金がもらえるまで、あと5年もある……これから65歳までどうしたらいいんだ」

途方に暮れたAさんは、「とりあえず、いま住んでいるタワマンは家賃が高過ぎるから引っ越さないと」と思い、不動産会社へ向かいます。

しかし、60歳の単身・無職であるAさんに、借りられる家はほとんどありません。

「まさか……家が見つからないなんて……」