順風満帆な人生の秘訣は“大成功を目指さなかった”から

マイホームを買ったのは13年だったが、このときもついていた。

「千葉県柏市の中古マンションなんですが、不動産屋が言うには建物はバブル最盛期の頃に設計したものなので造りは豪華。4LDKで90㎡の部屋で売り出したときは4,000万円だったそうだけど半額以下の1,800万円まで下がっていた。所有者は早く処分したいらしく50万円値引きするという話でした」

心理的瑕疵、環境的瑕疵などはなく部屋はきれいに使っていたし、生活の利便性も良かったので購入したが、代金はITバブルのときに儲けて預けていた貯金で半分以上賄えたのでローンは800万円しか組まなくて済んだ。

「数か所リフォームしたのですが、わたしの親と妻の親が援助してくれたので自己負担は30万円程度で済んだしね」

住宅ローンを組んだときは超低金利。変動型で0.5%、毎月の返済は7万4,000円。来年には完済できる見通しだ。

「最近も、こいつはラッキーだと思えることがたまにありますよ。会社内のことで言うと扱い難くて仕事ができない年上の部下が早期退職制度を使って辞めてくれたとか、業務改善の社内提案でわたしがリーダーで取りまとめた提案が銅賞を頂戴したとか」

私生活では、最近は奥さんの方にツキが来ている。

「一昨年のサマージャンボで3等が当たりまして、5万円の賞金をゲットしましたよ。去年の暮れには商店街の福引で5㎏のお米を引き当ててきた」

船尾さんの方はスクラッチカードで2万円当選したことと、20 年以上前に集めていたテレホンカードが7万円以上の値段になっていたことぐらい。

「自分がここまで上手くやれてきたのは大成功を目指さなかったからかもしれない。お年玉年賀はがきで切手セットを貰えたとか、台数限定の特価品の再生パソコンを買うことができただけでニヤッとしているのだからつくづく自分は小市民だと思いますね」

偉くなりたい、出世したい、大金持ちになりたい、チヤホヤされたい、名声が欲しい……。こういう欲望を捨てれば人生は悪くないと思うのだ。自分はついている。運が良いと思うようにするとたまにはいいことがある。そんな風に感じる。
 

増田 明利
ルポライター