健診などで「血糖値が高い」と指摘され、糖質の摂取量をおさえようと「糖質制限」を行っている人は多いでしょう。しかし、主食のご飯やパンをまったく食べないといったような“極端な糖質制限ダイエット”を継続した場合、かえって血糖値が上がりやすくなるケースがあると、糖尿病内科医の大坂貴史氏はいいます。著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、その理由と主食選びのコツについてみていきましょう。
糖尿病の専門医が糖尿病“予備軍”の患者に「ご飯(お米)を食べて」と伝えたワケ【医師が警告】
糖質制限で“一時的に痩せる”理由
「先生、私は昔、今回と同じように主食や甘いものを食べない“糖質制限ダイエット”でやせたことがあります。それはなぜですか? やせたほうが糖尿病対策にもいいと思うのですが……」
「先ほどお伝えしたように、ご飯やパン、麺などの主食には食物繊維が含まれていて、この食物繊維が体に水分をたくわえます。だから、それを抜くことで水分も体から抜け、“体重が落ちる”のです。だからリバウンドしやすいという結果も出ていますよ」
「はぁ。そうなんですね」
「主食を抜くことでインスリン分泌が低下し、さらに主食の代わりに動物性タンパク質や脂質を摂りすぎることでも血糖値が上がりやすい体になっています。糖質制限は長期間続けることで、糖に対するインスリンの反応が悪くなる事態が引き起こされるんですよ」
「そうなんですね。糖質制限って糖尿病にもいい食事法なのかと思っていました」
「制限するレベルも重要だと思います。ラーメンとチャーハンと餃子というトリプル炭水化物を食べていた人が、チャーハンだけにするように過剰な糖質を減らすなら、体への負担が軽くなるでしょう。ただ、食事から炭水化物を一切抜く食べ方はおすすめできません。血糖値が安定するように、自分の体に必要な栄養を摂る食事をするのが大切なんです」
そこそこ健康には気をつけてきたつもりだったが、知らないことばかりだ。
「糖質制限食が流行して10年ほどが経過し、少しずつ長期にわたって行う糖質制限の弊害がわかってきているところです。事実、糖尿病の人で、糖質制限を長く続けていてインスリン注射が必要になってしまうケースが増えています。インスリンを出さなくてよい状況が続くと、本当に出せなくなってしまうのです。人間の体は、とても合理的にできているのですね」
“糖質制限が血糖値を上げやすくする”という思わぬ事実を突きつけられ、まだ頭がフワフワしていた。しかし、私はこれから何をどうやって食べていけばいいのかきちんと確認しなければいけないと思った。
〈先生からの処方箋〉
主食の米は敵じゃない! 食物繊維も豊富なので味方につけて血糖値を安定させる