近年、日本各地で深刻な社会問題となっている空き家。総務省統計局の2023年「住宅・土地調査」によると、日本の空き家は386万戸に達し、総住戸数6,505万戸の5.9%、実に17戸に1戸が空き家という状況です。一方で、これから家を建てる消費者側にとっては、「どんな家を建てれば後悔しないだろうか?」「本当に価値のある家とは?」……こうした疑問が浮かぶかもしれません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、同氏の家の事例とともに後悔しない家選びについて解説します。
空き家だらけの日本だが…「まだ不足している家」、「もう建ててはいけない家」とは?【工務店社長が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

1. リビングを広げる南側の大きな窓

[図表2]リビングを広げる南側の大きな窓
[図表2]リビングを広げる南側の大きな窓

 

リビングに大開口の窓を設置。窓を開放すれば、ウッドデッキと庭の空間が広がり、大きなリビングと化す。ウッドデッキでお茶、ハンモックでお昼寝、庭で子どもや愛犬が遊ぶ。

2. 大きなひさしで日射遮蔽と風雨を防止

[図表3]大きなひさしで日射遮蔽と風雨を防止
[図表3]大きなひさしで日射遮蔽と風雨を防止

 

太陽光発電を設置した大屋根は、ひさしを大きくし、ウッドデッキや外壁を風雨から守る。夏場は日射調整にもなり、断熱にも有効。安定感のある外観も生み出している。

3. 家族が顔を合わせる間取り

[図表4]家族が顔を合わせる間取り
[図表4]家族が顔を合わせる間取り

 

リビングに階段を設置していることで、家族の行き来を確認できる。キッチンからダイニングとリビングが見渡せるので、家事をしながら家族の様子を見ることができる。

4. 断熱性と日射を考慮した窓の数と大きさ

[図表5]断熱性と日射を考慮した窓の数と大きさ
[図表5]断熱性と日射を考慮した窓の数と大きさ

 

断熱性を高めるために窓数や大きさを調整した設計に。小窓の配置は外観デザインにつながり、夜は外構の灯りとともに昼とは違う表情を見せる。

建てるべきではない家

私は日本家屋が好きです。天然木の風合いはもちろん、家の寿命を延ばすための設計と、それを実現するための職人技術を感じられるからです。100年以上もつ家ですが、冬場は寒いという特性もあります。この懸念点を払拭するために、新たな工法や建材を使った家づくりを進めているわけです。

 

日本には家が余っているといわれていますが、長く住み続けられる高性能の家はまだ不足しているといえるでしょう。将来に家の価値が残っていることは、例えば5000万円で建てた家が4500万円で売れるともいえます。35年の住宅ローンを払ったら価値が残っていない家は、建てるべきではないと思います。また、35年後のトータルコストは、高性能住宅であれば、低性能住宅よりかなり抑えられています(図表参照)。

 

そういった意味で資産形成はとても重要です。賃貸と違うのは、住宅ローンを返済したら、維持管理費と固定資産税、各種保険の支払いだけになること。高性能であれば光熱費も抑えられたままです。老後の生活が豊かになると思いませんか? 家づくりは投資価値の高いものだといえますよね。

 

住宅ローンを支払っている期間の生活、その後の生活で快適な暮らしができることは、お金では表せないことです。それは、人生を後押ししてくれているともいえるでしょう。家づくりの動機はそれぞれあってよいと思います。「子どもが生まれたのを機に広い住まいにしたい」「自宅で仕事ができるようにしたい」「二世帯生活をしたい」……。こうした動機に資産形成を取り込んでください。夢や目的をより実現しやすくしてくれると思います。

 

[図表6]戸建てorマンションのコストシミュレーション例(35年想定)単位:万円
[図表6]戸建てorマンションのコストシミュレーション例(35年想定)単位:万円 出典:『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)